第百四十九夜   昼の山道を登り、途中の展望台に車を停める。トイレにでも行き、その横に設置されている自動販売機で飲み物でも買おうかと車を降りる。 ここからは市街地が一望でき、特に夜景が美しいとしてデートにはうっ […]
第百四十七夜   買い物へ出掛けて都内のターミナル駅で乗り換えようと長い階段を登ると、スーツ姿のまだ似合わぬ若い女性がホームの端に腰掛けている。 しかし、混み合ったホームの中で彼女に注目しているのは多くないよう […]
第百四十五夜   塩を振った馬刺しの強い旨味をアテに芋焼酎を飲んでいると、上司が「ちょっと失礼」と言ってスマート・フォンを取り出す。 奥方への連絡でも忘れていたのだろうと皆少しだけ声を抑えつつ各々の会話を続ける […]
第百四十三夜   木曜から溜めた洗濯物を、人がおらず、かと言って暗くもない早朝にコイン・ランドリィへ洗濯に出るのが、勤め始めてからの私の習慣である。 道端に咲き誇る躑躅や薔薇を横目に行きつけの店へ向かっていると […]
第百四十一夜   行きつけの定食屋で豚カツを頼み、割り箸を擦り合わせてささくれを取り除いていると、後ろのテーブル席から火山の噴火がどうこうという声が聞こえた。そんなニュースも有ったなと、何とは無しにテーブル席を […]
第百三十九夜   友人の部屋に招かれて、友人四人で酒を飲むことになった。 男ばかりで集まるので適当な具材を買って鍋に放り込み、火が通るのを待たずに乾杯をする。 互いの近況報告などしているうちに鍋が煮え立ち、そろ […]
第百三十七夜   漫画喫茶のリクライニング・シートに背を預けながら目を閉じている。どうも、こういうところではしっかりと寝られない。うつらうつらと舟は漕ぐのだが、頭の何処かで、財布を取られはしまいかとか、明日寝過 […]
第百三十六夜   畳の部屋の中央に据えられた丸い卓袱台には簡単な朝餉が載せられ、見知らぬ一家が忙しくも楽しげに箸を動かしている。 それをガラスのあちらに歪んだ形で眼下に眺める私は、どうやら神棚に置かれているらし […]
第百三十三夜   助手席で釣り竿がクーラ・ボックスにぶつかりカタカタと音を立てるのを聞きながら車を走らせていると、前方で青い野球帽を被った老爺がこちらに手を振っているのが見えた。 朝マヅメもとうに過ぎた昼下がり […]
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