第百五十四夜    パァン 梅雨空に似合わぬ乾いた破裂音が耳をしたたか貫いたのは、しとしとと雨の降り続く夕暮れの図書館でのことだった。 一体何が起きたのか。 貧乏学生の鞄を盗むものも居まいと、取り急ぎ貴重品だけ […]
第百五十一夜   午前中の外回りに区切りが付いて、どこかで昼食をと思いながら社用車に乗り込む。 曲がりくねった道を抜けて郊外の幹線道路へ出て、白いセダンの後に付いて走る。この手の道沿いには広い駐車場を備えたファ […]
第百五十一夜   日課のジョギングへ出ようと寝間着からジャージに着替えて家を出る。毎朝同じ時刻に家を出るのだが、夏至も近くなって随分と明るくなったのがわかる。気温も高く走っていて負担に感じ始めたので、もう少し時 […]
第百四十九夜   昼の山道を登り、途中の展望台に車を停める。トイレにでも行き、その横に設置されている自動販売機で飲み物でも買おうかと車を降りる。 ここからは市街地が一望でき、特に夜景が美しいとしてデートにはうっ […]
第百四十七夜   買い物へ出掛けて都内のターミナル駅で乗り換えようと長い階段を登ると、スーツ姿のまだ似合わぬ若い女性がホームの端に腰掛けている。 しかし、混み合ったホームの中で彼女に注目しているのは多くないよう […]
第百四十五夜   塩を振った馬刺しの強い旨味をアテに芋焼酎を飲んでいると、上司が「ちょっと失礼」と言ってスマート・フォンを取り出す。 奥方への連絡でも忘れていたのだろうと皆少しだけ声を抑えつつ各々の会話を続ける […]
第百四十三夜   木曜から溜めた洗濯物を、人がおらず、かと言って暗くもない早朝にコイン・ランドリィへ洗濯に出るのが、勤め始めてからの私の習慣である。 道端に咲き誇る躑躅や薔薇を横目に行きつけの店へ向かっていると […]
第百四十一夜   行きつけの定食屋で豚カツを頼み、割り箸を擦り合わせてささくれを取り除いていると、後ろのテーブル席から火山の噴火がどうこうという声が聞こえた。そんなニュースも有ったなと、何とは無しにテーブル席を […]
第百三十九夜   友人の部屋に招かれて、友人四人で酒を飲むことになった。 男ばかりで集まるので適当な具材を買って鍋に放り込み、火が通るのを待たずに乾杯をする。 互いの近況報告などしているうちに鍋が煮え立ち、そろ […]
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