第百五十四夜

 

 パァン
梅雨空に似合わぬ乾いた破裂音が耳をしたたか貫いたのは、しとしとと雨の降り続く夕暮れの図書館でのことだった。

一体何が起きたのか。

貧乏学生の鞄を盗むものも居まいと、取り急ぎ貴重品だけをズボンのポケットに詰め込んで音のした玄関の様子を窺う。

近所の高校のジャージを着た坊主頭の少年が、玄関先をのたうち回り、周囲で図書館の職員と思しき男女が、
「救急車を呼べ」
「警察もだ」
「火を消せ、水溜りでいいから冷やせ」
と口々に叫んでいる。よく見れば、彼の化学繊維のジャージの所々に火が付いているのが見える。のたうち回っていたのは水溜りの水でそれを消そうとしてのことだったのかと思い至る。

特に何ができるわけでもなく、自分の身の安全も担保されているのかどうか分からぬまま、目と耳とに全神経を集中させて事態の把握に努めるうち、サイレンとともにパトカーと救急車が到着し、少年が運ばれてゆく。

警官と話していた年配の図書館員は、玄関に居並ぶ野次馬へ館内に戻るよう支持し、暫くして館内放送が流れた。
「先程、当館の傘立てで、爆発が起きました。高校生が、自分の置いた傘がないので、別の場所に有った、自分のものとよく似た傘を手に取ったところ、柄が爆発するとともに油が飛び散って引火したものだそうです。幸い命に別状は無いそうですが、これから職員とご利用の皆様へ、警察が事情聴取を行うということですので、ご協力願います」。

そんな夢を見た。

No responses yet

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

最近の投稿
アーカイブ