第八百二十九夜    学校から帰って玄関の扉を引くと、予想に反して鍵が掛かっていて小さくつんのめった。のめりながら朝の母の言葉を聞き流していたのを思い出す。夕方に用事があって出掛けるるから、塾へ行く前に冷蔵庫の […]
第八百二十三夜   電車で座る女  夜勤明けのの早朝、下りの列車に揺られながら朝食に何を食べようかと思いながらスマート・フォンでニュースを眺めていると繁華街の駅から如何にも水商売らしい派手な身形の女性が乗ってき […]
第八百十夜    次のアポイントまで一時間ほど時間が空いてしまい、客先近くの大型商業施設の駐車場に車を停めた。小糠雨が降り続く中を喫茶店まで歩くのも面倒で、細々した仕事は車内で済ませることにする。  周囲が静か […]
第六百五十四夜   目を閉じて気分良く列車に揺られていてふと目を覚ますと、ちょうど会社の最寄り駅の一つ手前の駅に着いて扉の開くところだった。次の駅までもう数分の猶予しかないと、重い瞼をどうにか閉じずに過ごさねば […]
第六百十五夜   エレベータ・ホールに到着して下向きの三角形が描かれたボタンを押して上を向くと、一階のランプが点灯していた。 一階のランプが消えて二階のそれが点き、また消えて三階へと移る様子を眺めながら、背後か […]
第五百九十七夜   保育所から娘の手を引いて帰宅し、夕飯の下ごしらえをしていると、妻から後三十分ほどで帰宅する旨の連絡が入った。 それなら帰宅を待って一緒に食べようと娘に告げると彼女は力一杯に頷いて、何を思い付 […]
第五百五十一夜   まだ通い慣れぬ道を自転車で走っていて赤信号に捕まった。まだ硬い制服のポケットからスマート・フォンを取り出して時刻を確認するが、始業にはまだ余裕がある。わざわざ自転車を引いて歩道橋を渡るほどの […]
第五百四十九夜   部活の午前練習のために早起きして身支度を整えて居間に向かうと、寝間着姿のままの父がコンロに向かい朝食の準備をしていた。今日は父がリモート勤務で朝食当番らしい。 棚から皿と椀とを取り出して父の […]
第五百四十七夜   日課というほどのこともない単なる朝の習慣として、顔を洗い、軽く歯を磨くと、カーテンを開けて窓の外を眺める。 このアパートの二階の角部屋には学生の時分から随分長く住んでいるのだが、お隣の古い一 […]
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