第六百五十四夜   目を閉じて気分良く列車に揺られていてふと目を覚ますと、ちょうど会社の最寄り駅の一つ手前の駅に着いて扉の開くところだった。次の駅までもう数分の猶予しかないと、重い瞼をどうにか閉じずに過ごさねば […]
第六百十五夜   エレベータ・ホールに到着して下向きの三角形が描かれたボタンを押して上を向くと、一階のランプが点灯していた。 一階のランプが消えて二階のそれが点き、また消えて三階へと移る様子を眺めながら、背後か […]
第五百九十七夜   保育所から娘の手を引いて帰宅し、夕飯の下ごしらえをしていると、妻から後三十分ほどで帰宅する旨の連絡が入った。 それなら帰宅を待って一緒に食べようと娘に告げると彼女は力一杯に頷いて、何を思い付 […]
第五百五十一夜   まだ通い慣れぬ道を自転車で走っていて赤信号に捕まった。まだ硬い制服のポケットからスマート・フォンを取り出して時刻を確認するが、始業にはまだ余裕がある。わざわざ自転車を引いて歩道橋を渡るほどの […]
第五百四十九夜   部活の午前練習のために早起きして身支度を整えて居間に向かうと、寝間着姿のままの父がコンロに向かい朝食の準備をしていた。今日は父がリモート勤務で朝食当番らしい。 棚から皿と椀とを取り出して父の […]
第五百四十七夜   日課というほどのこともない単なる朝の習慣として、顔を洗い、軽く歯を磨くと、カーテンを開けて窓の外を眺める。 このアパートの二階の角部屋には学生の時分から随分長く住んでいるのだが、お隣の古い一 […]
第五百四十六夜   アルバイト先のバックヤードに、妙なところがあった。 カウンタから裏に入ると細長い事務所があり、その先に更衣室があるのだが、その扉は全開状態で固定され、扉の枠にレールを取り付けてカーテンで仕切 […]
第五百八夜   秋の陽は釣瓶落としとはよく言ったもので、夕焼けの残るうちに入った商店街の八百屋と肉屋とで買い物を済ますと、辺りはすっかり暗く、アーケードの向こうで太陽を追いかける細く白い月がくっきりと浮かんで見 […]
第五百六夜   帰宅の電車に揺られながら、疲れ目を癒やすべく目を閉じて手三里のツボを押していると、近くに座った学ラン姿の二人の、ちょうど声変わりの時期らしい声が耳に入ってきた。 「お前、いつもそれ食ってるよな」 […]
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