第八百二十九夜    学校から帰って玄関の扉を引くと、予想に反して鍵が掛かっていて小さくつんのめった。のめりながら朝の母の言葉を聞き流していたのを思い出す。夕方に用事があって出掛けるるから、塾へ行く前に冷蔵庫の […]
第八百二十八夜    北風に肩を窄めながら帰宅して荷物を置き、何はともあれ風呂に湯を張った。北から強い寒気が南下しているそうで、今晩は今季で一番の冷え込みになると朝から予報が出ていた。それなりに着込んで出掛けた […]
第八百二十七夜    サークルの部室で年末最後のレポートを書き上げて伸びをすると、腹の中に溜まっていた何かの気体が移動して腹が鳴った。それを聞き付けた後輩の一人が、昼食時も過ぎていい頃合いだから食事に行こうと声 […]
第八百二十六夜    秋の陽は釣瓶落としと言うけれど、もう冬至も近付いて校門を出る頃には既に西の空が赤くなっていた。どんどん暗くなる山道を谷を一つ尾根を一つ越えなければならないと思うと漕ぐペダルに力が入る。   […]
第八百二十五夜    バイトを終え、事務所の一角をカーテンで区切っただけのロッカー・ルームへ入り、男性利用中のマグネット付きの札を脇のホワイト・ボードに貼り付けてカーテンを閉めた。制服のシャツを脱いでロッカーを […]
第八百二十四夜    連休明けの通学路を歩いていると、いつもの交差点でいつもの連中と合流した。何やら朝から男女に分かれ、信じるとかあり得ないとかキャアキャアと揉めている。  何の話かと尋ねるまでもなく、彼らの方 […]
第八百二十三夜   電車で座る女  夜勤明けのの早朝、下りの列車に揺られながら朝食に何を食べようかと思いながらスマート・フォンでニュースを眺めていると繁華街の駅から如何にも水商売らしい派手な身形の女性が乗ってき […]
第八百二十二夜    知人と映画を見に行こうと誘われて、即答で断った。どうせ何の予定もないだろうになぜ断るのかと実に余計な一言を加えながら理由を問いながら、彼は不満気に頬をふくらませるが、もちろん可愛気など一切 […]
第八百二十一夜    満員電車の蒸し暑さが嫌で薄着で出掛けたは良いものの、夕方に通り過ぎた前線のお陰で風が急に冷たくなって、帰宅するころにはすっかり体が冷えてしまっていた。電子錠に触れて扉を開けて荷物を置く。リ […]
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