第百八十一夜   仕事を終えて帰宅し、レジ袋から酒とツマミを取り出して座卓に広げる。 独り酒に静寂は心がささくれるのでテレビを点ける。何が見たいというのではないが、恐怖映像特集とやらを見つけ、まだまだ厳しい残暑 […]
第百八十夜   昼寝から目が覚めて伸びをすると、首元でチリンと耳に刺さる金属音がする。おやと思って俯くとまたチリンと鳴るが、視界に入る限り何もない。どうやら首輪の下に鈴が付けられているらしい。 音に気付いた同居 […]
第百七十九夜   幾らか秋めいて涼しくなった夜風に吹かれながら、今しがた見終わった映画のディスクを手に、幹線道路の脇の歩道を歩く。 週末はレンタル・ビデオ店で古い映画を借りて酒を飲む。学生時代に付いた習慣で、社 […]
第百七十七夜   畑仕事を終え、木陰で弁当を広げようとしてうっかり握り飯を落としてしまった。握り飯は雑木林の斜面をころころと転がり落ちたかと思うと、不意に視界から消える。 土まみれになったそれを食う気はないが、 […]
第百七十五夜   夏の終わりに女子会でもと、大学の友人四人で集まって酒宴を開いた。   ちょうどテレビで心霊番組が流れていたので、いかにも合成臭いとか、出演者の怖がり方がわざとらしいとか、今のはよく出来た話だと […]
第百七十三夜   麻雀に誘われて友人宅へ招かれた。彼のアパートへは初めて訪ねるのだが、スマート・フォンへ送られてきた地図情報のお陰で特に迷うこともない。便利な世の中になったものだ。 酒とツマミの入ったレジ袋を片 […]
第百七十一夜   母に頼まれた街での買い物を終えて実家へ戻る田舎道を走っていると、盆も終わりとなって幾らか涼しくなった風が窓から入って髪を揺らす。都会と違いすれ違う車も少なく、空気も綺麗だ。 走っているうちに、 […]
第百六十九夜   社会人二年目、学生時代の友人達ともやや疎遠になったが、かといって新たに友人関係が構築されるわけでもない。折からの猛暑に郷里の夏の暑さはもう幾らかマシだったかと懐かしみ、冷房代の浮く分で学生時代 […]
第百六十八夜   木枝に羽根を休めながら、辺りのクヌギの幹に集る甲虫達を品定めしていると、里の方からクマザサの揺れる音がする。イノシシでも来たかと振り向いてみれば人間の若い女である。里山の森へ僅かに漏れる月明か […]
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