第百八十三夜

 

雨に降り籠められて休日が退屈にり、ふと暫く振りに自宅のデスクトップ・PCの電源を入れる。仕事のデータを持ち帰ることができなくなったこと、簡単なネット・サーフィンくらいはタブレットで済ませてしまうようになったことから、めっきり使わなくなった。

予報ではまだ進路がはっきりしないが、次の台風も発生していて、下手をすると来週末も暴風雨となるかも知れぬそうだ。

何か学生時代にやっていたゲームでもと思っていると、通話ソフトに着信がある。掛けてきたのは見知らぬIDの持ち主だ。英会話の練習に、見知らぬ人々と会話できるように導入したソフトで、社会人になってからも暫くは、恩返しのつもりで日本語を学びたがる外国人とお喋りをするようにしていたのだった。

通話を開始してハローと呼びかけると、同じ言葉が返ってくる。続いて流暢な英語の発音で、お前は日本人か、俺はグァム生まれのアメリカ人で、今度の週末に旅行するんだが、日本にお勧めの観光地は無いか、台湾や中国とどっちがよいかと、矢継ぎ早に質問が飛んでくる。

台湾や中国も見るべきところは少なくないだろうし、食い物もうまいだろう。だが、日本が好きなら日本へ来るといいだろう。日本人は日本を贔屓にする外国人には、常識を弁えてさえいれば優しい。それに、ここ十五年ほどで次々に世界遺産に認定された史跡や自然が山ほどあって、外国人が旅行をするのに随分と楽になったはずだ。

そんなことを言ううちに興味を持って質問されるのが嬉しく、通話をしながらブラウザを起動してこのページを見ろ、写真より実物の方がずっと綺麗なのだなどと、秋の景勝地を幾つか紹介して長いこと話し込んだ。

最後に、丁寧に対応してくれてお前はナイス・ガイだ、次の週末は日本へ行くことにするよと言って彼は通話を切った。

それを嬉しく思いつつ、来週末と言えば次の台風は何処へ向かうのか。彼の旅行の妨げにならねばよいが。そう思って予報を検索してみると、先程までははっきりしないと台湾の南西までしか示されていなかった予報円が、はっきりと日本列島を縦断するように描かれていた。

そんな夢を見た。