第八百六十六夜

 

 一週間ぶりの休日は朝から晴れて気温が上がって、洗濯物を狭いベランダに干すだけの間にすら汗を掻く。使い古した下着を処分して、うっかり着替えがなくなってしまったため、早く乾くことを祈りながら掃き出し窓の網戸を閉め、部屋にハタキを掛ける。大した時間を過ごすでもないのに、埃というものはどうしてこう直ぐに積もるのだろうか。
 掃除を終えて屋内の用事が片付いたのを確認し、メモとショッピングバッグとを片手に買い物に出掛けると、店の開く時間には未だ魔があるにも関わらず既に日差しが肌に刺さる。
 あれもこれも値上げで買い難くなったものだと眉間に皺を寄せながら小一時間で洗剤やら食料やらを買い込んで自転車に積み込む。できる限り日陰を選びながら住宅街を走ると、公園には数人の子供たちが集まってボールを追いかけたり、藤棚の下で何やら小さな画面に頭を寄せ合って遊んでいる。
 帰宅して荷物を片付け、昼食の献立を考えながらシャワーを浴びる。冬場なら体が温まるし、夏場なら体を冷えるので、午後を快適に過ごすためこのタイミングで風呂に入るのが習慣なのだ。毎週日曜の昼前には簡単な料理を紹介するテレビ番組があって、それを見ながら「自分もあれぐらい器用ならなあ」などと、プロを相手に失礼な憧れを抱きながら簡単な食事を作るのもルーティーンの一部だ。
 冷蔵庫の中身を思い出しながら髪を拭き、着替えを着てテレビを点けると、まだ例の番組には少し時間があるようだ。この気温ならもう乾いているだろうと洗濯物を取り込もうとベランダを見て気が付いた。干したはずの洗濯物一式がきれいに無くなっていて、ハンガーの類もきちんと籠に仕舞われていた。帰宅してからそんな事をした覚えはない。よくよく思い出してみれば、風呂の前に着替えを用意した覚えもないし、洗濯物を取り込んでいなければ下着がなかったはずだ。
 それに気が付くと今自分の穿いている下着が得体の知れぬもののような気がして、とても穿いてはいられなくなった。
 そんな夢を見た。

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