第八百六十二夜    高校受験を終えた娘が中学を卒業して三週間ほど経ち、重大なことに気がついた。娘が明らかに太っている。  中学三年生の夏にテニス部を引退して以来、筋肉の多少落ちた様子こそ見られたものの顔や腕、 […]
第八百六十夜    顎に手を当て他姿勢で時折低く唸りながら数分かけて部屋を眺め回した末、 「部屋には特に何の問題も無いね」 と、小母さんは笑いながらこちらを振り向いた。 「はあ、そうですか」 と答える私に彼女は […]
第八百五十六夜    同僚と昼食のうどんを突きながら世間話をしていたところ、一人暮らしの家事のコストの話題になった。掃除やら自炊やらに続いて洗濯の話になると、 「洗濯と言えば、ちょっと前から変なことが起こるんで […]
第八百五十二夜    春休みの宿題も早々に終えて暇をしている娘が本を読む傍らで仕事をしていると、突然部屋が暗くなり、パタパタと雨が窓を叩き始めた。同僚に離席を通知して洗濯物を取り込もうと席を立つと、娘も立ち上が […]
第八百四十九夜    祖父の何回忌だったか、疫病騒ぎもあって暫く振りに帰省した。法事も恙無く終え、雨の軒下で夕食後の一服に煙草を吸っていると、いつの間にケージから出たのか、連れてきた猫が家の灯りにうっすら照らさ […]
第八百四十四夜    内見の後始末を終えて報告書を書き上げた部下が、 「例の部屋、いい加減お祓いとかして貰ったらどうですかね。大家さんを説得して」 と、普段より一段階低い声で提案の態をとった要求をしてきた。その […]
第八百四十一夜    同棲している彼女が仕事から帰ってきて、風呂に入っている間に夕食を作る。葉物野菜の値が漸く落ち着いてきたので、今日はコラーゲンたっぷりの鶏鍋である。  タオルを頭に巻いて上がってきた彼女は鍋 […]
第八百四十夜    一月も半ばを過ぎ冷え込みがきつくなってきたためだろうか、近所の爺さんが亡くなった。小さな町の酒屋――今はコンビニエンス・ストア担っているが――の主人で、息子とは幼馴染で長いこと腐れ縁が続いて […]
第八百三十九夜    成人式、と今は言わなくなったのだったか、とにかく同世代の若者が集まる公的なイベントの日、バイトに入ったカラオケ店は入れ代わり立ち代わりで客が途切れることがなく、フードメニューの一部が底をつ […]
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