第八百六十一夜    夕食を終え、弟が風呂を済ませるまでの間に居間で宿題を広げると、父が推理物のテレビ・ドラマを見始めた。彼の寝室の押し入れにはミステリ小説やテレビ・ドラマを記録したメディアが詰まった段ボール箱 […]
第八百六十夜    顎に手を当て他姿勢で時折低く唸りながら数分かけて部屋を眺め回した末、 「部屋には特に何の問題も無いね」 と、小母さんは笑いながらこちらを振り向いた。 「はあ、そうですか」 と答える私に彼女は […]
第八百五十九夜    春休みも半ばとなった朝、嫌な汗を掻きながら部屋の本棚を片端からひっくり返している。学校に併設の児童図書館で借りた本の返却期限が今日なのだが、うち一冊がどうしても見当たらない。いつも借りてき […]
第八百五十八夜    美容院というものは平日の昼間でも結構混み合っているものなのだなと、十八年の短い人生の中で初めて知った。或いはこの店が特に人気店であるとか、平日の中でも今日が特に混み合いやすい曜日だとかの事 […]
第八百五十七夜    年度末の仕事量に押されてここ数日、帰宅が深夜になっていた。近所の量販店の閉店時間が午後十時で、冷蔵庫の中身が枯渇しているため、仕方なく最寄りのコンビニエンス・ストアへ軽い晩酌の肴と明日の朝 […]
第八百五十六夜    同僚と昼食のうどんを突きながら世間話をしていたところ、一人暮らしの家事のコストの話題になった。掃除やら自炊やらに続いて洗濯の話になると、 「洗濯と言えば、ちょっと前から変なことが起こるんで […]
第八百五十五夜    算数の授業が始まって十五分ほどが過ぎた頃、教室の後ろのドアが音を立てて開かれた。クラス中が驚いて振り返り、黒板で問題を解いていた宿題忘れのやんちゃ坊主がチョークを取り落としそうになってお手 […]
第八百五十四夜    四月からの新生活を前に最寄り駅から数駅の範囲でアルバイト先を探し、幾つかの候補に絞って面接を申し込んだ。春らしく日差しの暖かな午前十一時、自転車で二駅離れたカラオケ店へ向かうと、制服姿の店 […]
第八百五十三夜    トレイに載せたカップ二つを窓際の少女達へ運ぶと、 「ね、凄いの凄いの!今度こそ凄いの!」 と聞こえてきた。  私のバイト先であるこの店は大手チェーンに比べて値段が安く、彼女達のような学生服 […]
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