第二百一夜   風呂上がりの濡れた頭を拭きながら暗い廊下を歩いていると、年末年始の休みに帰省して来た兄の部屋の扉の隙間から光が漏れていた。父と二人して酔いつぶれたのを母と二人で運んでやったのだが目を覚ましたのだ […]
第二百夜   家路に吹く風の予想外な冷たさに、遅い夕食を確保しに立ち寄った深夜営業のスーパーで葉物と鶏肉を買わされた。 簡単に煮込みうどんにでもして暖を取ろう。 そんな夕餉への期待を頼りに人気のない寒空の下を歩 […]
第百九十九夜   丸一日降り続いた雨が上がって、日課のジョギングに出た。長雨に埃の洗われた秋の夜空に透き通る星明りが美しい。 家からほど近い大きな公園を小一時間走って、休憩をしようといつも腰を下ろすベンチへ向か […]
第百九十五夜   雨の止んだのを見計らい、秋雨続きで溜まった洗濯物を抱えて、アパートから徒歩数分のコイン・ランドリィへ向かう。 人気のない店内に入ると、一人暮らしの一週間分の衣類を洗濯機へ放り込む。洗濯機を回し […]
第百九十四夜   満員の急行列車が駅を通り過ぎようとして、けたたましい金属音と共に急ブレーキを掛けた。と、目の前の座席で先程まで船を漕いでいたセーラ服の少女が、急に体を強張らせて呻き声を上げる。 緊急停止を詫び […]
第百九十二夜   紅葉の渓流を写真に収めようと車を走らせていると、人里から随分と離れたところで谷を眺めながら歩く人影に追いついた。肩に提げた荷物から釣り人と分かる。 こんなところを一人で歩く姿に違和感を覚えるが […]
第百九十一夜   玄関先に立って二人の女声を相手に、もう三十分も押し問答を繰り返している。 通信販売で買った荷物の指定した時刻に一致していたため、呼び鈴を押されて不用心に玄関を開けてしまったために宗教勧誘を受け […]
第百八十九夜   大学のサークルで参加したイベントの後片付けに手間取って、終電を逃した。 しかし、家の近い友人を持つ者も少なくなく、始発の動き始めるまで居場所の無いのは私を含め五人で、駅から近い二十四時間営業の […]
第百八十八夜   残業をどうにか終電に間に合わせ、人気の無いベッド・タウンの駅で降りる。 駅前の繁華街は狭く、大通りを一つ渡ると直ぐに薄暗い住宅街へ入る。一定の間隔で街頭が立ってはいるがその間隔は疎らで、蛍光灯 […]
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