第百九十九夜

 

丸一日降り続いた雨が上がって、日課のジョギングに出た。長雨に埃の洗われた秋の夜空に透き通る星明りが美しい。

家からほど近い大きな公園を小一時間走って、休憩をしようといつも腰を下ろすベンチへ向かうと、一帯が柵と虎ロープで囲まれている。立て看板を見つけて読めば、花壇や歩道の整備のために暫く工事をするとのことだ。

仕方無しにもう一度走り出し、記憶を辿って園内にどこか別のベンチがなかったかを思い出してみる。確か、中央部の林の周りに噴水があり、それを囲むようにいくつかのベンチがあった筈だ。

程なく噴水前に辿り着き、息を整えながらベンチに向かう。林の手前のツツジの茂みがガサガサと音を立てたのは、餌付けされた猫が様子を見に来たものだろうか。

ベンチの背に手を掛け、林の方に猫の姿でも見えないかと見回すと、奥に丸く明るい空間が浮かび上がって見える。そこだけ木が生えておらず、月明かりに照らされているのだ。

ベンチから上を見上げても、木々に遮られて月は見えない。そこから下へと視線を下げると、林の闇の中に青白く丸い空間が開けている。

暫く見惚れていると、何か青白いものが五センチほど、土から上へ伸びているのに気が付いた。三本、いや、横に曲がってもう一本、キノコか何かだろうか。

息も落ち着いたのでベンチを離れ、軽く伸びをして再び月明かりの下を走り出す。

林の中の光景を思い出しながら脚を動かすうち、弄り回していた知恵の輪が不意に外れるように、土から生えていたものの正体が閃いた。

それは確かに、人の指であった。

そんな夢を見た。

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