第百九十五夜

 

雨の止んだのを見計らい、秋雨続きで溜まった洗濯物を抱えて、アパートから徒歩数分のコイン・ランドリィへ向かう。

人気のない店内に入ると、一人暮らしの一週間分の衣類を洗濯機へ放り込む。洗濯機を回しながら、置いてあった雑誌を眺めながら時間の過ぎるのを待つ。

脱水の終わった洗濯物を乾燥機に放り込み、再び雨の降り出す前に帰れるかと時折外の様子を気にしながら座っていると、一人の若い女性がやってきて自動ドアが開く。

顔に見覚えがあるのは、互いにここをよく利用するからだろう。女性の洗濯物を見るのも失礼かと、面白くもない雑誌に目を戻す。

直ぐに女性も作業を終え、離れた位置のソファに腰を下ろすと、見知らぬ人間同士が密室に居るとき特有のぎこちない緊張感が辺りに漂う。

電子音が鳴って止まった乾燥機から洗濯物を取り出し、簡単に畳みながら鞄へ詰め、店の外へ向かうと、
「あの」
と遠慮勝ちに呼び止められる。
「はい、何か?」。
不意のことでかすれた返事を返して振り返ると、女性は不安げに眉をひそめ、
「今日は、いつもの娘さんとご一緒じゃないんですか?」
と上目遣いに尋ねた。

そんな夢を見た。

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