第百七十九夜

 

幾らか秋めいて涼しくなった夜風に吹かれながら、今しがた見終わった映画のディスクを手に、幹線道路の脇の歩道を歩く。

週末はレンタル・ビデオ店で古い映画を借りて酒を飲む。学生時代に付いた習慣で、社会人になっても変わらない。

夕方、散歩がてらに家を出て、映画を選び、酒とツマミを物色して家に戻る。映画と酒とツマミを楽しむ。

その後すぐにビデオを返しに家を出る。今度は夜の散歩も楽しめる。余程荒れた天候でもなければ、酔った頭に夜風が心地よいし、返却の期限のあるものをそのまま家においておくのは気持ちが悪い。

返却を終えたらスッキリした気分で家路に就く。飲み足りなければ寄り道をしてまた酒を買い足す。

そんな習慣が、かれこれ十年近くも続いている。知人には、そんなに映画を見るのなら、インターネット上でのサービスを利用するほうが余程便利で安上がりだと諭される。が、ただでさえデスク・ワークで運動不足なので、これ以上の出不精を招くような真似はしたくない。

店の広い駐車場を横切って、返却箱へ向かう。基本的には二十四時間営業の店なのだが、店員に酔っぱらいの相手をさせるのも申し訳ないので、返却はもっぱらこの箱を利用することにしている。

妙に人気のないのを訝しみつつ、ステンレス製の蓋を開けてディスクを箱へ押し込むと、ぐいとディスクが引っ張られ、慌てて手を引っ込めた。

背中に悪寒が走り、じわりと嫌な汗が滲む。
――一体何が……。

いや、そんなことは知ったことではない。箱に背を向けるのが嫌で数歩後退りして、そのまま早足で歩道へ戻った。

そんな夢を見た。