第百四十七夜
買い物へ出掛けて都内のターミナル駅で乗り換えようと長い階段を登ると、スーツ姿のまだ似合わぬ若い女性がホームの端に腰掛けている。
しかし、混み合ったホームの中で彼女に注目しているのは多くないようで、リュックサックを背負った若い男性が特にちらちらと様子を窺っているのが目立つくらいであとは皆連れ合いと談笑をするか、静かに一人で列車を待っている。
間もなくホームへ電車の到着を知らせるアナウンスが流れると、初めに女性が、続いて男性がリュックを投げ捨てるようにして線路へ飛び込む。続いて列車が速度を緩めながら入って来るのに、あっと思う間もない。
衝突音のようなものは聞こえなかったように思う。二人とも無事でいてくれと思いながら駅員を呼びに行こうとすると、すぐに駅員が駆けつけたので、手持ち無沙汰に見守るしかなくなってしまった。
アナウンスが流れ列車が五メートルほど位置をずらすと、駅員の一人に肩を借りて若い男性が上がってきた。
女性の方はと心配していると、
「女の人が……」
「そんな人は居ませんでしたよ。ホームの様子はカメラで撮影して、モニタで確認してるんですから」
と言い合う声が聞こえた。
そんな夢を見た。
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