第百五十一夜

 

午前中の外回りに区切りが付いて、どこかで昼食をと思いながら社用車に乗り込む。

曲がりくねった道を抜けて郊外の幹線道路へ出て、白いセダンの後に付いて走る。この手の道沿いには広い駐車場を備えたファミリィ・レストランかコンビニエンス・ストアが付きものだ。

看板を探して目を動かしていると、セダンの後部座席に少年の顔があるのに気が付いた。平日の昼間にふさわしく、幼稚園児くらいの幼い子供が、リア・ウインドウに張り付くように座席から身を乗り出しじっと私を見つめて笑っている。背筋に悪寒が走り、腋の下に嫌な汗が滴る。その少年の笑顔が、「にこにこ」というよりももっと粘度の高く意地の悪い「にやにや」したものだったからだ。

左手にコンビニエンス・ストアの看板を見付けてはっと我に返り、その広い駐車場へハンドルを切る。

五台ずつ二列、十台分の駐車場には六台の先客があり、水色のワンボックスの後ろのスペースへ車を停め、財布とキィだけを手に店の自動ドアをくぐる。

他人様の子供を捕まえて酷い言い種とは思うが、これまであんなに気味の悪い笑い方をする子供を、いや大人であっても、見たことはなかった。そんな薄気味悪さを反芻しながら、適当な飲み物と軽食の会計を済ませ、車に戻る。

シートに背を預けてサンドウィッチの包を開けようとしてぞっとした。

目の前のワンボックスの後部座席から、先程と同じ少年がこちらを見てにやにやと笑っていた。

そんな夢を見た。
 

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