第百四十九夜

 

昼の山道を登り、途中の展望台に車を停める。トイレにでも行き、その横に設置されている自動販売機で飲み物でも買おうかと車を降りる。

ここからは市街地が一望でき、特に夜景が美しいとしてデートにはうってつけと、地元では有名だそうだ。今日はそのための下見と暇潰しを兼ねての、一人でのドライブである。

用を足した後、崖の下に広がる街を見下ろしながら自販機で買った缶珈琲を一口飲むと、急にひどい睡魔に襲われる。出発前に昼食を摂ってから一時間が経って、腹に血が回った所為だろうか。兎に角このまま運転を続けるのは危険だと判断して、車に戻って中で寝ることにする。

運転席に戻って座席を倒し、目の上に腕を置いて目隠しをすると程無く眠りに就いた。

ふと気付くと、体が軽い。すっかり寝込んでしまったものと思って腕時計を見ると六時を指している。特に予定のない休日だったが、車内で昼寝をして潰してしまったとは勿体無い。加えて、慣れぬ山道を闇の中で走るのは遠慮したいので、直ぐにエンジンを掛けて車を出す。夏至の近くなったこの時期、まだ日没には時間があるはずだ。

暫く山道を下っていて、山側から伸びる木々の緑が美しいのに違和感を抱いた。いくら日が長くなったといっても、明る過ぎるのだ。

腕時計を確認すると、やはり六時を回ったところである。秒針も元気に動いているので、ゼンマイが切れている様子はない。いや、ゼンマイが途中で切れていたなら本当はもっと晩い時刻であって、つまりもっと暗いはずなのだから、そんな可能性を考慮する必要はない。

それでも正確な時刻が気になる。生憎、電波式の時計はここにはない。自分のアナログ趣味が恨めしい。

スマート・フォンならどうだろう。定期的にインターネット経由で時刻を取得して自動で修正されるはずだ。そう思い至ってダッシュボードに据えたスマート・フォンに触れ時刻を表示させると、画面には午後二時半が示された。

そんな夢を見た。