第二百二夜   行き付けのバーで友人に待たされ、独りでスマート・フォンを弄りながらカクテル・グラスを舐めていると、手の空いたマスタがグラスを磨きながら、 「お連れの方は」 とカウンタ越しに声を掛けてくれた。 ス […]
第百九十九夜   丸一日降り続いた雨が上がって、日課のジョギングに出た。長雨に埃の洗われた秋の夜空に透き通る星明りが美しい。 家からほど近い大きな公園を小一時間走って、休憩をしようといつも腰を下ろすベンチへ向か […]
第百九十一夜   玄関先に立って二人の女声を相手に、もう三十分も押し問答を繰り返している。 通信販売で買った荷物の指定した時刻に一致していたため、呼び鈴を押されて不用心に玄関を開けてしまったために宗教勧誘を受け […]
第百八十八夜   残業をどうにか終電に間に合わせ、人気の無いベッド・タウンの駅で降りる。 駅前の繁華街は狭く、大通りを一つ渡ると直ぐに薄暗い住宅街へ入る。一定の間隔で街頭が立ってはいるがその間隔は疎らで、蛍光灯 […]
第百八十七夜   父方の祖母の法事で、記憶にある限り初めて父の実家へやってきた。その祖母というのがどうも母と折り合わず、私の物心付くより前に大喧嘩をして以来、ほとんど往来が失くなったのだという。 定型句のように […]
第百七十八夜   アルバイト先のカラオケ店へ着くなり、バックヤードで店長から、 「例の部屋、大掃除するから着替えたら来い」 と言われて気が重くなる。 今年の春先から異臭のする部屋があり、利用客から人死が出ている […]
第百七十四夜   夏の終わりにシーズンをやや外れて安くなった学生向けのプランを利用した旅行を友人から提案され、なんとか金と時間の都合を付けて参加することになった。 しかし、ターミナル駅の高速バス乗り場へ早朝に付 […]
第百七十二夜   「この後、幽霊を見に行かないか」と誘われて、思わず、 「は?」 と間抜けな声を上げてしまった。 頭から外した手拭いで顎の下の汗を拭いながら誘ってきたのはこの剣道クラブで知り合った中年男だ。クラ […]
第百七十夜   今日は盆休みの初日だから、朝食後の珈琲を普段よりゆっくりと味わえる。デザートに甘ものをつまみながら妻と他愛ない会話をしていると、小学二年生の息子がようやく起きてきたので、夏休みだからといってだら […]
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