第四百四十一夜   母に呼ばれて居間の扉を開けると、焼きたてのホット・ケーキの香りが鼻腔をくすぐった。 妹と並んで食卓に座り、バターとメイプル・シロップを掛けてナイフで一口大に切り分けて口へ運んでいると、背後で […]
第四百三十九夜   数日ぶりに気持ちよく晴れた日曜の朝、春の長雨のために溜まってしまった洗濯物を午前中にやっつけてしまおうと、ベランダの物干しに洗濯物を吊るしていると、背後からインターフォンの呼び出し音が聞こえ […]
第四百三十八夜   荷物持ちを期待して買い物に連れて行った弟が帰り際、 「本屋に寄っていきたい」 と言いだした。目論見の外れたことを内心で嘆きつつ、生鮮食品の袋を受け取って一人家路を歩くことにする。 弟が大学進 […]
第四百三十七夜   カートに載せた一週間分の食糧を眺めながら、屋上の駐車場へ向かうエレベータの到着を待っていた。最近は運動不足を補うべく、多少のことなら階段を上り、自転車や自動車を避けて歩くことにしているが、流 […]
第四百三十三夜   仕事で招かれた先であてがわれた宿は、海に切り立つ崖の上に建っていた。このご時世で客も従業員も少なく、宿の主人がしきりに碌な饗しが出来ないと頭を下げたがとんでもない、海の幸と甘い地酒が大いに気 […]
第四百三十一夜   会計を終えた商品を買い物袋に詰め終えて、一階出口へ続くエスカレータへ向かうと、トイレの前のベンチに小さな子供を抱いた若い母親が座っているのが見えた。 言葉を話し始めたばかりの頃なのだろう、母 […]
第四百三十夜   深夜、バック・ヤードで雑誌を読んでいると、監視カメラのモニタに駐車場へ入って来る大型トラックの姿が見えてレジへ出る。 間もなく件の運転手と思しき若い男が入店し、いらっしゃいませと声を掛ける私に […]
第四百二十九夜   午後の陽の柔らかく当たるベランダで並べたプランタを弄っていると、尻のポケットに入れたスマート・フォンが短く振動した。 剪定した葉や落ち葉をゴミ袋に入れてその口を縛り、生ゴミ用のバケツに片付け […]
第四百二十五夜   求人情報を見付けて訪ねた雑居ビルの二階、衝立で仕切られた面接室らしき区画に受付の女性に案内され、 「そちらへお掛けになってお待ち下さい」 と、椅子を勧められる。 直径二メートルほどの白い円卓 […]
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