第四百五十四夜

 

大型連休の開けた朝、連休中に溜まった生ゴミをようやく捨てられると、昨夜中に纏めて土間に置いておいたゴミ袋を手に玄関を出ると、お隣さんも丁度同じ様に共用廊下へ現れたところだった。

派手な顔立ちの美人だが、深夜に男を連れて帰宅しては朝まで騒ぐので迷惑この上ない人物である。

並んで歩くような仲でもなく、かと言って後を付いて歩き不審に思われるのも癪に障るので、簡単に挨拶だけして彼女の前を歩いて集積場に向かい、ゴミ袋を置いて振り返り、彼女とすれ違って部屋へ戻る。

手を洗い、簡単な食事を済ませて着替えていざ仕事へと部屋を出る。

と、ちょうど集積所から戻って来たらしい彼女と再び鉢合わせ、互いに小さく会釈してすれ違う。

と、頭に疑問が過る。自分が食事を摂って後片付けをし、着替えるのにどれくらい掛かったろう。普段なら三十分ほどだろう。彼女はだらしのないスウェット姿で、手には何も持っていなかった。財布くらいはポケットにでも入るだろうが、朝食を買いに近所のコンビニエンス・ストアへでも行っていたなら買い物袋くらい持って帰ってくるだろう。コンビニの食事スペースは、このご時世で封鎖中だ。いくらだらしない格好で外へ出られる性格といっても、若い女がスウェットのままコンビニの駐車場ででも食事を摂って帰ってくるなんてことがあるだろうか。だとすれば、彼女は三十分もの間、ゴミ集積場で何をしていたのだろう。

集積場を横目にそんなことは考えるだけ無駄と思い直し、雨の翌朝の湿った風が顔に纏わりつくのを覚えながら駅へ向かった。

そんな夢を見た。

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