第四百六十三夜

 

買い貯めした向こう一週間分の食料品を両手に提げて量販店を出ると、予報に反してにわか雨が路面を濡らしていた。

傘は持っていないが、両手の塞がっている以上濡れて歩くことには変わりないので濡れて帰るしかない。それよりも、予報を信じて干してきた洗濯のやり直しが面倒だ。狭い部屋に干して湿度の上がるのも、生乾きの匂いも憂鬱だ。

駐車場の車の下で雨宿りをする猫を見つけて気分を紛らわしながらワンルームへ帰宅して荷物を下ろし、玄関でびしょ濡れの服を脱ぎ、極力床を濡らさぬように部屋に上がる。居間へ続く扉を開けると、正面の硝子窓の向こうで洗濯物が雨に濡れている。

そのはずだった。

扉を開けた向こうでは、窓に沿って張ったロープに洗濯物が吊るされて、そろそろ生乾きの匂いを発している。
――またか。
そう思いながら箪笥からタオルと着替えを取り出し、床に垂れた水滴を拭き取る。
この部屋ではたまに、こういう事が起こる。生ゴミを出そうと思いながら急な呼び出しでそれができなかったときにゴミ袋に収められて口が閉じられていたり、大きめの地震で本棚から飛び出た中身が、倒れた鉢植えを片付けている間に本棚に戻っていたり、そういう小さな、しかし面倒な家事が知らぬ間に片付いているのだ。

まさかストーカでも潜んでいるのかと疑ったこともあるが、何を盗まれるでもなく、何処かに潜んでいる気配や痕跡があるでもない。夢見が悪いとか金縛りに遭うわけでもなく、今ではすっかり慣れてお世話になっている。

何かお供え物でもすべきなのだろうか。線香を炊いたり手を合わせたり?

そんなことを考えながら、買ってきたものの表面をアルコールで拭き始めた。

そんな夢を見た。