第五百三十九夜   早番の勤務を終える十分前、いつも通りに遅番の者とフロント業務の引き継ぎをしていると、その脇で電話が鳴った。 その呼び出し音の音色でそれが内線だとわかり、最も子機に近い私が反射的に受話器を取る […]
第五百三十七夜   スマート・フォンから試験時間の終了を知らせるタイマが鳴って、椅子の上で両拳を突き上げて背筋を伸ばした。塾の先生からは時間を掛け過ぎずに解けるようになれば高得点を狙えるのでその練習をしろと言わ […]
第五百三十六夜   晩酌をしながらだらだらとネット配信のニュースを見ていると、動画配信サービスで冬場の恐怖映画特集なるものが開催されているとの広告が目に入った。 酔いが回る前にシャワを浴び、食卓兼万年床の炬燵に […]
第五百三十四夜   早朝、朝日の照らす海が綺麗だと子供に起こされテントを出る。 小学校低学年で好奇心の塊のような弟に引き摺られ、海を見下ろす崖へと出ると、元々が低血圧の気のある姉が、父母のキャンプ趣味に付合わさ […]
第五百三十二夜   風呂から上がり、濡れた身体をタオルで拭きながら晩酌のツマミに何を作るか、冷蔵庫の中身を思い出しつつシミュレートしているうち、 「しまった」 と思わず独り言ちた。ちょうど昨晩、買い置きの酒を切 […]
第五百二十九夜   「ああ、そうそう、これ持って行って。で、店の裏口を出たところで使ってから帰ってな。ゴミはそこらに捨てたら駄目よ」 と渡されたのは、名刺の四分の一ほどの大きさの長方形の袋だった。よく見れば紙の […]
第五百二十八夜   陽光が目に刺さって目を覚ますと、全身に軽い痺れのような感覚が有った。筋肉痛の先触れのような、こむら返りのおさまった後の疲労感がまだ筋肉に残っているような感覚だ。 はて、昨夜はそんな風になるま […]
第五百二十五夜   疫病騒ぎもそれなりに落ち着いているからと彼氏に誘われて、有名な神社の最寄り駅で待ち合わせをした。 待ち合わせ場所に着くと、予定時刻の十分前だというのに珍しく彼が先に到着していて、肩を窄め、缶 […]
第五百二十三夜   初詣ついでに新年最初の買い物に出掛けようと、簡単に着替えて上着を羽織った。 その胸の内ポケットに長財布を差し込もうとして、クシャリと何か硬い紙を押す手応えがある。週末の度に何枚かあるコートを […]
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