第四百九十七夜   郊外へ引っ越しをした晩、最低限の衣服、寝具と風呂、トイレ周りの荷解きとを終わらせたところで疲れ果て、見慣れぬ風呂場で汗を流した後直ぐ、居間に広げた布団に親子三人久し振りに川の字になると、目を […]
第四百九十六夜   取引先から帰社する電車の中、 「何か旨いものでも食おうか」 と上司が言い、最寄り駅の駅前の飲食店が臨時で出している弁当で、結構値の張るものを奢って貰った。 近くのコンビニエンス・ストアでお茶 […]
第四百九十四夜   ワクチンを打った日の深夜、熱帯夜と発熱に浮かされて寝付かれず、口に出来るものも底を突いた。喉は渇き、食欲は一切無いが体内のエネルギが足りぬ気配だけは切実に感じる。仕方がない、汗でぐっしょり濡 […]
第四百九十三夜   疫病騒ぎで減った運動量と反比例して増える体重に、久々に夜のジョギングを再開しようと、きつくなったジャージと運動靴とを発掘して、爽やかな風の吹くようになった夜道へ出た。 学生時代に拡張した胃袋 […]
第四百九十二夜   深夜頃にはここらも暴風域に入ると聞いて風雨の酷くなる前にとバイトを家に帰す約束をして、滅多に下ろすことのないシャッタを店の大きな窓の半ばまで下ろした。 ここは山中の盆地に田畑の広がる中、比較 […]
第四百八十七夜   九月に入ってから後期の授業が始まるまでの間を選んで、私の所属するサークルでは毎年夏合宿をすることになっていた。 夏の最盛期を過ぎて料金の下がり、人出も少ない平日を中心に宿を借りて、朝から晩ま […]
第四百八十四夜   朝食を終え、茶を飲みながら疫病騒ぎに孫も来ない退屈な盆休みに何をして過ごそうかと考えて、一昨日迎えたばかりのメダカのことを思い出し、餌の容器を片手に小さな庭へ出た。 といって、私の趣味で迎え […]
第四百夜   夏休み中の学校で開かれている水泳の特別授業を終えて帰って来るなり「痛いから見てくれ」と要求し、ワンピースの裾を捲くってこちらに背を向ける娘の尻に、確かに左右二つの大きな青アザが出来ていた。 薬を求 […]
第四百七十六夜   終業式の朝、いつもの時刻にいつもよりずっと軽いランドセルを背負って家を出た。 学校は自宅から駅とは反対方向で、同じ路地に同年代の子が住んでいないから、交差点に出るまでは駅へ向かう大人達とすれ […]
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