第五百二十一夜   年明け後が締め切りの仕事を年内に片付けてしまおうと、炬燵に電気ポットと甘い物を用意して、ノートPCに向かって作業を始めたのは夜中の十一時頃だった。 疫病騒ぎは数字の上では治まったようだが、マ […]
第五百二十夜   年明け後が締め切りの仕事を年内に片付けてしまおうと、炬燵に電気ポットと甘い物を用意して、ノートPCに向かって作業を始めたのは夜中の十一時頃だった。 疫病騒ぎは数字の上では治まったようだが、マス […]
第五百十九夜   「こちらをご覧頂けますか?」 と警官が差し出したタブレットに表示されていたのは、ブルーシートに乗せられたどなたかのご遺体だった。 肩まで伸びる黒髪も、まだ真新しい上下のパンツ・スーツもずぶ濡れ […]
第五百夜十八   疫病騒ぎが落ち着いて、遂にとあるバンドの生ライブが行われることになった。 是非一緒に見に行こうと、同性の友人へ連絡を入れて返事を待ちながら、まだチケットも取れるかどうかわからないのに、浮かれた […]
第五百十一夜   緊急事態宣言が解除されて間もなく、兄から合同コンパ、というよりはもう少し真面目なお付き合いを前提としたパーティのメンツを集めてほしいと、先輩から連絡が来た。 ここ暫くはそういうこともなかったが […]
第五百十夜   風呂上がり、バスタブの中で体を拭き、絞った髪をタオルで巻き上げて部屋着を着て洗面台を見ると、蛇口の横の眼鏡立てに眼鏡がない。 自宅で過ごす際には風呂と睡眠以外で眼鏡を外す習慣がない。だからわざわ […]
第五百八夜   秋の陽は釣瓶落としとはよく言ったもので、夕焼けの残るうちに入った商店街の八百屋と肉屋とで買い物を済ますと、辺りはすっかり暗く、アーケードの向こうで太陽を追いかける細く白い月がくっきりと浮かんで見 […]
第五百六夜   帰宅の電車に揺られながら、疲れ目を癒やすべく目を閉じて手三里のツボを押していると、近くに座った学ラン姿の二人の、ちょうど声変わりの時期らしい声が耳に入ってきた。 「お前、いつもそれ食ってるよな」 […]
第五百四夜   管理人の趣味でカボチャやら黒猫やらの飾り付けられたエレベータ・ホールで、夕食の入った買い物袋を手持ち無沙汰に揺らしながらエレベータの降りてくるのを待っていた。 やがてエレベータの扉が開き、一歩踏 […]
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