第五百七十一夜   メッセージ・アプリのグループチャットに、サークルの院生の先輩からお土産を買ってきたという連絡が入った。授業に隙間が空いていて図書館で課題でもと思っていたが、折角だからとサークル室へ顔を出すと […]
第五百七十夜   顧問が急病で部活が半分休みになった土曜の午後、部活仲間と高校近くで急に出来た暇を潰して最寄り駅へ帰ってくると、ちょうど辺りは夕焼けに染まっていた。 額に手を翳して西日に目を細めながらロータリィ […]
第五百六十九夜   入線してきた電車に乗り込むと目論見通りに人は疎らで、七人掛けのシートの両端と中央に一人ずつが座り、片側四枚の扉周辺の隅に数人が立って乗っているばかりだった。 座席はがら空きではあるものの、誰 […]
第五百六十八夜   配送から帰ってきた新入りのドライバが、駐車場に車を停めるなり顔を真っ青にして事務所へと駆けて行った。 ――ああ とちょっとした予感がする。手元の仕事に一区切りを付けてから、事務所へと様子を見 […]
第五百六十七夜   同棲中の彼女が派遣先を辞めたいと相談してきた。半年ほど前に紹介された小さな旅行代理店で、前社長が亡くなった後にその夫人が後を継いだタイミングで人手が足りなくなったという。 前社長の業務を夫人 […]
第五百六十五夜   よく晴れて見晴らしの良い田舎道を自転車で走っていて、ふとその光景に見覚えがあるのに気が付いた。 といって、ほんの一ヶ月半ほど前にも同じ道を同じように走ったのだから風景に見覚えがあって当然だ。 […]
第五百六十三夜   駅に着いてプラット・フォームへ出ると、そこに待つ人々は既に疎らだった。疫病騒ぎの中にわざわざ満員電車に乗ることもあるまいと、出社の時間を遅らせて晩く帰ることにしているからだ。 中でも途中駅で […]
第五百六十夜   二年に上がって初めて教室に入って以来、不思議に思っていることがあった。他の学校、他の地域ではどうかわからないが、私の卒業した小学校では各教室にオルガンが置かれていた。中学に上がるとそれが無くな […]
第五百五十九夜   昼食のスパゲッティとレトルトのソースとを二つの鍋で茹でながら、傍らの冷蔵庫の側面に貼り付けたタブレットで映画を見ていると、居間でスマートフォンが鳴った。メッセージ・アプリの通話要求の効果音だ […]
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