第五百九十三夜

 

出先で腹具合が悪くなり、たまたま目に付いたコンビニエンス・ストアへと脚を早めた。疫病騒ぎの初期には多くの店で客の便所利用が禁止されていて難儀したのを思い出す。

自動ドアから出てくる客と入れ違いに、客の出入りを知らせるチャイムを背に入店し、レジに立っていた店員に便所の利用許可を得て店の奥へ向かう。よく効いた冷房に汗の引くのを感じながら見回すと、店内に他の客は見当たらない。

戸を引いて中に入って鍵を掛け、荷物を洗面台の脇に置いて用を足していると、便所の中に先程も聞いたチャイムの音が鳴って少々驚く。店員が用を足している際に客が入ったときのための設備だろうか。

恙無く用を済ませ手を洗って便所を出、利用料代わりにペットボトルの水とミント・タブレットとを手にレジへ向かうと、弁当コーナで商品の入れ替えをしていた店員がカウンタの中へ小走りでやって来て応対してくれる。

精算を待つ間、店内を振り返って見回して、妙なことに気が付く。他に客が誰も居ない。何だか無性に気になって、便所に入っている間に誰か入店しなかったか尋ねるも、誰も来ていないと言う。店員自身も含め、先程入れ違いになった客との出入り以来、出入り口の自動扉は開いていないそうだ。

そんな筈はない、確かにこの耳でチャイムを聞いたのだという自信もあるが、だからといってこの店員にそんなくだらない嘘を付く理由も無いだろう。

二人して首を捻った後、変なことを言って申し訳なかったと謝罪しながら荷物を鞄に詰めて、三度目のチャイムを聞きながら店を後にした。

そんな夢を見た。