第五百七十五夜   友人に誘われて助手席に乗り、山中の夜道を走っていた。特に何の目的があるわけでもなくガソリンを消費する、いわゆるドライブという行為である。特にそれを趣味にしているわけではないが、助手席で寝てい […]
第五百七十四夜   バイクの事故で脚を折って入院して約一週間、そろそろ退院してリハビリという頃合いの土曜の朝に、友人が夫人とともに見舞いの果物を持って見舞いに来てくれた。 入院中既に幾度も連絡を取り合っていたの […]
第五百七十三夜   疫病騒ぎで客足の遠のいた観光地に補助金が入って、テレ・ワークが可能な人間が安く宿を取って連泊しながら仕事をするような観光の形式が現れた。同僚の一人がそれで温泉宿に泊まっていると自慢する画面越 […]
第五百七十二夜   バイト上がりの夕方六時頃、夏至が近付いて日が暮れるのも随分遅くなったものだと夕焼けを眺めながら帰宅しようと自転車に跨ったとき、スマート・フォンに着信があった。 ポケットから取り出して画面を見 […]
第五百七十一夜   メッセージ・アプリのグループチャットに、サークルの院生の先輩からお土産を買ってきたという連絡が入った。授業に隙間が空いていて図書館で課題でもと思っていたが、折角だからとサークル室へ顔を出すと […]
第五百七十夜   顧問が急病で部活が半分休みになった土曜の午後、部活仲間と高校近くで急に出来た暇を潰して最寄り駅へ帰ってくると、ちょうど辺りは夕焼けに染まっていた。 額に手を翳して西日に目を細めながらロータリィ […]
第五百六十九夜   入線してきた電車に乗り込むと目論見通りに人は疎らで、七人掛けのシートの両端と中央に一人ずつが座り、片側四枚の扉周辺の隅に数人が立って乗っているばかりだった。 座席はがら空きではあるものの、誰 […]
第五百六十八夜   配送から帰ってきた新入りのドライバが、駐車場に車を停めるなり顔を真っ青にして事務所へと駆けて行った。 ――ああ とちょっとした予感がする。手元の仕事に一区切りを付けてから、事務所へと様子を見 […]
第五百六十七夜   同棲中の彼女が派遣先を辞めたいと相談してきた。半年ほど前に紹介された小さな旅行代理店で、前社長が亡くなった後にその夫人が後を継いだタイミングで人手が足りなくなったという。 前社長の業務を夫人 […]
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