第五百七十五夜

 

友人に誘われて助手席に乗り、山中の夜道を走っていた。特に何の目的があるわけでもなくガソリンを消費する、いわゆるドライブという行為である。特にそれを趣味にしているわけではないが、助手席で寝ているだけでいいからと乞われて仕方がなく付き合っている。

山の麓のコンビニエンス・ストアでトイレ休憩をして十五分ほど走ったろうか、辺りはすっかり暗い森となって見るものも無くなって、いよいよ目を閉じて眠ろうかと思ったところ、前方に橙色の灯が見える。トンネルにしばしば使われるナトリウム・ランプだが、近年は減ってきているらしい。

トンネルから漏れるその光に照らされて、小さな庇に囲われた地蔵がオレンジ色に照らされて、トンネル入口の直ぐ脇に立っているのが見える。交通安全の祈願か、それとも事故の慰霊のためか。次第に近付くそれを眺めながらぼんやりしていると、間近まで近付いてすれ違いざまに漸く、その地蔵に首のないのに気が付いた。タチの悪い連中の仕業だろう。一つ大きく息を吐いて目を閉じる。

暫くして肩を揺すられると、そこは何処かのコンビニの駐車場だった。休憩がてらに二人で車を降りると、友人は伸びをしながら帰りは海沿いを走ると予定を話す。

店に入ってその話に区切りが付いたところで、
「さっきのお地蔵さん、可愛そうだったね、ちょっと気味が悪かったけれど」
と、例の首無し地蔵の話をしてみる。しかし友人は地蔵など全く気付いていなかったらしい。
「え、そんなものあった?どの辺り?」
「ほら、トンネルの入口の道端にあったでしょう?今時珍しいオレンジ色の灯のトンネル」。
そう言うと友人は訝しげに眉間に皺を寄せ、ポケットから取り出したスマート・フォンを取り出してこちらに差し出す。
「今まで走ってきた道に、トンネルなんて無いんだけど……」
との言葉通り、画面に示された走行ルートにはトンネルなど何処にもなかった。

そんな夢を見た。