第六百六夜   家庭教師のバイト先に着くと、教え子がマスク越しにもわかる笑顔で出迎えてスリッパを用意してくれた。ここ数週間ほど妙に表情が暗くなっていて心配をしていたのだが、何か悩みでも解決したのだろうか。 スリ […]
第六百五夜   夕食後の片付けをしていると水がすっかり冷たく、約半年ぶりに手が悴んでしまった。 夏場は湯槽に浸かる習慣がないのだが、そろそろ身体を温めて寝る時期かと湯槽の底に栓をして給湯器を操作して卓袱台の前の […]
第六百四夜   趣味の野球観戦で外野席から写真や動画を撮りたいと思い立ち、写真を趣味にしている後輩を仕事上がりに焼き鳥屋へ誘った。一通りの相談を終えて、彼が勧めてくれたカメラをタブレットで検索する。 出てきた中 […]
第六百三夜   定期試験の初日、午前で三教科の試験を終えて、秋雨の降る中を帰宅していた。急に秋めいて肌寒い住宅街は昼下がりということもあってか人気が無く、細い道を通る車も無い。ただ傘を打つ雨滴のノイズを聞きなが […]
第六百一夜   都内や近郊の終電が無くなって程なく、稼働しているタクシーの一台から連絡が入った二時間半ほど前に時間指定のお客様を担当した車だ。 GPSを見れば隣県のど真ん中で、随分遠出をしたものだ。先程のお客様 […]
第五百九十九夜   祝日前の就業後、趣味の写真を撮りに遠出するべく某線に乗った。向かい合わせに置かれた座席の所々に乗客があり、新聞を読む者、タブレットで野球の中継を見る者、味の濃そうな弁当でビールを飲む者など、 […]
第五百九十八夜   彼女の買い物に荷物持ちとして同行した帰りはまだ夕食には早過ぎる頃合いで、喫茶店で甘い物でもと誘われてモダンな外装の喫茶店に二人でふらりと立ち寄った。 季節の甘味ということでマロン・グラッセの […]
第五百九十七夜   保育所から娘の手を引いて帰宅し、夕飯の下ごしらえをしていると、妻から後三十分ほどで帰宅する旨の連絡が入った。 それなら帰宅を待って一緒に食べようと娘に告げると彼女は力一杯に頷いて、何を思い付 […]
第五百九十六夜   昼休み、近所の公園で空にした弁当箱と水筒とを入れた手提げ鞄を片手に事務所へ戻ると、南側の港を向いた窓の辺りで同僚達が何やらワイワイと騒いでいた。 自分のデスクに荷物を置いて歩み寄り、何か珍し […]
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