第六百五夜

 

夕食後の片付けをしていると水がすっかり冷たく、約半年ぶりに手が悴んでしまった。

夏場は湯槽に浸かる習慣がないのだが、そろそろ身体を温めて寝る時期かと湯槽の底に栓をして給湯器を操作して卓袱台の前の座椅子でタブレットを起動する。余所事をしていても自動で湯を張って溢れさせることがないのだから、便利な世の中になったものだ。

ニュース番組の動画を聞きながらニュース記事を読んでいるうちに電子音が鳴り、湯の張り終わりを教えてくれる。半年前に何処かへ仕舞ったきりのビニル製の防水ケースを探してタブレットを入れて風呂に入る。子供の頃からぬるい湯で長風呂をするのが好きで、その暇潰しの友にニュース記事の続きでもよもうというつもりだ。

一通り身体を洗っていざ湯槽へと風呂椅子から立ち上がると同時に、ふっと風呂場が暗くなる。電球が切れたろうか、考えてみれば随分と長い間電球を換えていないが、いや、前回LEDに換えたのだ、そうそう切れはしない筈……などと考えていると、またふっと光が戻る。
湯に浸かってタブレットを弄るだけなら灯りは無くても構わない。調子が悪いのなら念の為、明日にでも予備の電球を買ってこよう。そう思って湯槽に脚を突っ込むと、今度は幾度か明滅を繰り返した後、再び浴室が真っ暗になる。まるで昔見たホラー映画のワン・シーンのようだ。

ひとまず体が冷えるのを嫌って湯に肩まで浸かってニュース動画を眺めるが、五秒や十秒ほどの感覚で明滅が繰り返されて集中できない。やはり明日代わりの電球を買ってこよう。

それなりに身体が暖まったところで湯槽を出、風呂の扉に掛けておいたタオルを取って体を拭き、脱衣所兼洗面所に出て電灯のスイッチを入れる。と、数秒の間を置いて灯りが点き、また数秒で暗くなる。そのタイミングは背後の風呂場と完全に同期していて、何だか気味は悪いものの機械的な不良が予想される。

明滅を繰り返す灯りの中で着替えを済ませ、やかましく起動処理を繰り返すプリンタ等の機器のコンセントを抜く。
一体何事かと思いつつもカーテンを開けると案の定、街灯から民家まで、街中の灯りが同期しながら明滅を繰り返していた。

そんな夢を見た。