第二百四十一夜   定時巡回を終えて守衛室に戻ると、雑誌を前にカップ麺を啜っていた先輩が「ご苦労さん」と労ってくれた。 懐中電灯と制服の帽子を棚に起きながら、センサに反応もないのに見回りに出ることに意味はあるの […]
第二百三十九夜   台所の背後にある扉を引き開けると、右手に鏡付きの洗面台、正面にカーテン付きのバスタブ、左手に便器が配置されている。私の借りている部屋のユニット・バスのそれとは配置が異なり違和感を覚えながらズ […]
第二百三十五夜   共働きの両親が東京へ戻った月曜の朝、独り母の実家に残された私を退屈させまいと思ったのだろう。祖父は私を納屋へ連れて行き、そこにある機会がいかに危険かを説明してから、畑仕事を見に来るかと誘った […]
第二百三十三夜   耳慣れない音に目を覚ますと、常夜灯の橙色の灯りに、いつもよりずっと高く広い天井が視界を覆っている。枕や布団も普段よりずっとふかふかで、自分が寺生まれの友人宅に泊まりに来ているのだと思い出され […]
第二百三十二夜   私の開けた後部座席のドアから乗り込むなり、 「運転手さん、コレ」 と、スーツ姿の女性が派手な花柄の紙袋の紐を摘むようにして持ち上げ、こちらに示した。 顔見知りのお客様というわけでもないから、 […]
第二百三十一夜   郊外のホームセンタへ妻と娘を載せてきた。が、買い物をしている間は基本的にお呼びでない。妻に買い物が終わったら荷物を運ぶから携帯へ連絡するよう伝えて、屋上の駐車場に設えられた喫煙所へ上る。 車 […]
第二百二十六夜   語学の授業が終わった後、ここのところ元気のなかった友人から、学食で昼食でもどうかと誘われてついて行くことにした。 暫く前には引っ越しをしたいが費用がないと嘆いと言ってやけに暗い顔をしていたの […]
第二百二十三夜   一人暮らしの休日の夜のお供にと、近所で映画を借りてきた。わざわざ寒い中を出掛けなくてもネットの配信サービスを使えば好さそうなものだが、同じような夜の過ごし方をする同士が多いためか、この時間は […]
第二百二十二夜   通勤電車の乗り換えに歩くコートの肩を背後から叩かれ、知り合いかと思い振り返ると、らくだ色のコートにシルクのマフラーをした初老の紳士が、いたずらを咎められた犬のような目で私を見ていた。 全く見 […]
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