第二百四十六夜   怪奇モノのTV番組を見え終えた娘達に風呂を促そうとしたときだった。 「じいちゃんも、死神を見たことがあるぞ」 と、ビールで酔った父が上機嫌に笑う。 私が子供の時分には、こんな風に子供と会話を […]
第二百四十五夜   薬品の臭いのする廊下を、足音を忍ばせながら部屋番号を確かめつつ歩く。特に病院が嫌いというわけではないが、非日常的な清潔さ、静かさ、臭いには、どうしても胸がざわつく。 ――あった。 目的の大部 […]
第二百四十三夜   突然、ブツリと電話が切れた。 大型連休を目前に控えた夜、大学の友人の一人から数年ぶりに掛かってきた電話だった。連休中に暇ならば久しぶりに会って酒でも飲もうと、スマート・フォンを肩と耳とで挟み […]
第二百四十一夜   定時巡回を終えて守衛室に戻ると、雑誌を前にカップ麺を啜っていた先輩が「ご苦労さん」と労ってくれた。 懐中電灯と制服の帽子を棚に起きながら、センサに反応もないのに見回りに出ることに意味はあるの […]
第二百三十九夜   台所の背後にある扉を引き開けると、右手に鏡付きの洗面台、正面にカーテン付きのバスタブ、左手に便器が配置されている。私の借りている部屋のユニット・バスのそれとは配置が異なり違和感を覚えながらズ […]
第二百三十五夜   共働きの両親が東京へ戻った月曜の朝、独り母の実家に残された私を退屈させまいと思ったのだろう。祖父は私を納屋へ連れて行き、そこにある機会がいかに危険かを説明してから、畑仕事を見に来るかと誘った […]
第二百三十三夜   耳慣れない音に目を覚ますと、常夜灯の橙色の灯りに、いつもよりずっと高く広い天井が視界を覆っている。枕や布団も普段よりずっとふかふかで、自分が寺生まれの友人宅に泊まりに来ているのだと思い出され […]
第二百三十二夜   私の開けた後部座席のドアから乗り込むなり、 「運転手さん、コレ」 と、スーツ姿の女性が派手な花柄の紙袋の紐を摘むようにして持ち上げ、こちらに示した。 顔見知りのお客様というわけでもないから、 […]
第二百三十一夜   郊外のホームセンタへ妻と娘を載せてきた。が、買い物をしている間は基本的にお呼びでない。妻に買い物が終わったら荷物を運ぶから携帯へ連絡するよう伝えて、屋上の駐車場に設えられた喫煙所へ上る。 車 […]
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