第二百八十夜   ホームルームが終わると、皆が椅子を机に乗せ、教室の後部に寄せて床を広く開けた。見晴らしが良くなったと思う間もなく、そこへ段ボールや模造紙、絵の具が広げられ、ガヤガヤと思い思いにお喋りをしながら […]
第二百七十九夜   せめて気温の上がり切る前にと、開店直後の量販店で食料を買い込んだ。一週間分の食料のずっしりと重い買い物袋を両手に提げて、額を垂れる汗を拭うこともままならないまま住宅街の細い路地へ入る。 大通 […]
第二百七十八夜/h3>   日が暮れてなお蒸し暑いホームから車両へ入ると、よく冷えて乾いた空気がシャツの汗と体温を急激に奪っていった。それだけで、一日の仕事を終えそれなりの達成感と大きな疲労感を抱えた身体 […]
第二百六十七夜   腕を怪我した友人に頼まれて、臨時に酒の配送を手伝うことになった。彼を助手席に乗せて指示に従って運転し、彼の御用聞きをしている間に荷運びをする。 初め運転を任せては効率が悪いから彼がやると言っ […]
第二百六十六夜   夜勤明けのそろそろ眠たい頭でコインランドリィから部屋に返ってくると、生暖かい空気がじっとりと出迎えてくれる。湿度はさほど外と変わらないのに、不思議と温度は籠もる。 かといって冬場は何処からと […]
第二百六十五夜   社長が事故で急死したとの報せが入り、午後の社内が普段にも増して慌ただしくなった。 役職付きは今日のうちに通夜があるかもしれないからとのことで、下に関係先への連絡を指示し、喪服や数珠を何処に仕 […]
第百八十一夜   トイレから戻ってきた年配の上司が、手術前の外科医のように胸の前に両手を上げながら、椅子の背もたれに掛けた上着のポケットからハンカチを出してくれと言う。 中腰になって向かいの席に手を伸ばし失礼し […]
第二百五十九夜   目を覚ますと下腹に、痛みに近い尿意を覚えた。 寝る前に用は済ませたのだが、こればかりは仕方がない。小学生の中学年頃から数日に一度はこうして尿意で目を覚ますようになってもう数年経つ。 睡魔の押 […]
第二百五十七夜   土曜の夕方、ゼミの先輩のアパートに男六人が酒とツマミを持って集まった。 雷と窓を叩く雨音を聞きながら麻雀を打ち続け、気付くと雨が小康状態になっている。テレビのニュースが引き続き雷雲の西から湧 […]
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