第二百九十夜   電車を降りると海風が強いのか、磯の香りが鼻を付く。こういう晩は天気予報に関係なく弱い雨の降ることが多い。 外に干した洗濯物を心配しながら牛丼のチェーン店に入り持ち帰りの注文をして、カウンタ席の […]
第二百八十九夜   そろそろ日付が変わる頃合いに、レジスタをアルバイト仲間に任せ、バック・ヤードから明日発売の雑誌を運び出すことにする。 どこのコンビニエンス・ストアでも同じというわけではないかもしれないが、駅 […]
第二百八十五夜   ソファ・ベッドの前に置いた低いテーブルに酒とツマミ、大型モニタにネット配信の映画を流す用意をして部屋の電灯を消してから、このささやかな宴の前に用を足しておこうとワンルームの戸を開けて便所に入 […]
第二百八十夜   ホームルームが終わると、皆が椅子を机に乗せ、教室の後部に寄せて床を広く開けた。見晴らしが良くなったと思う間もなく、そこへ段ボールや模造紙、絵の具が広げられ、ガヤガヤと思い思いにお喋りをしながら […]
第二百七十九夜   せめて気温の上がり切る前にと、開店直後の量販店で食料を買い込んだ。一週間分の食料のずっしりと重い買い物袋を両手に提げて、額を垂れる汗を拭うこともままならないまま住宅街の細い路地へ入る。 大通 […]
第二百七十八夜/h3>   日が暮れてなお蒸し暑いホームから車両へ入ると、よく冷えて乾いた空気がシャツの汗と体温を急激に奪っていった。それだけで、一日の仕事を終えそれなりの達成感と大きな疲労感を抱えた身体 […]
第二百六十七夜   腕を怪我した友人に頼まれて、臨時に酒の配送を手伝うことになった。彼を助手席に乗せて指示に従って運転し、彼の御用聞きをしている間に荷運びをする。 初め運転を任せては効率が悪いから彼がやると言っ […]
第二百六十六夜   夜勤明けのそろそろ眠たい頭でコインランドリィから部屋に返ってくると、生暖かい空気がじっとりと出迎えてくれる。湿度はさほど外と変わらないのに、不思議と温度は籠もる。 かといって冬場は何処からと […]
第二百六十五夜   社長が事故で急死したとの報せが入り、午後の社内が普段にも増して慌ただしくなった。 役職付きは今日のうちに通夜があるかもしれないからとのことで、下に関係先への連絡を指示し、喪服や数珠を何処に仕 […]
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