第二百五十六夜   地元だからと案内を頼まれ、ゼミの友人と二人して、最寄り駅から近所の神社へ並んで歩く。 古くから門前町として栄えた地域だが、ここ数年は外国人観光客が急増した。季節によっては、昼のあいだ平日と言 […]
第二百五十四夜   出張から返ってきた夫が息子に飛行機の模型を渡すと、彼は早速居間のソファで箱を開け、夢中で組み立て始めた。 それを横目に寝室へ向かい、背広を脱いでクローゼットに掛けた夫が、 「そういえば、行き […]
第二百五十二夜   早朝まだ薄暗い中、駅前の大きな公園で噴水前の広場で軽く準備運動をする。 冬に走り始めてこれまで続いているのは、周りが暗い中を走ると妙に心の落ち着くからだった。だんだんと日の出が早くなるのに合 […]
第二百五十一夜   大学で知り合った留学生がパンダを見たいと言うので、上野の西郷像で待ち合わせをした。 地下鉄を降りて地上に出ると、初夏の日差しが目を焼く。階段に腰掛けた似顔絵描きの横を登ると、待ち合わせには十 […]
第二百五十夜   夕刻、外での用事を済ませ、帰社するために乗った列車でラップトップ・パソコンのキィを叩いていると、セーラー服の集団が乗り込んで来て、少々喧しくなった。 若い子の元気が良いのは好いことだと年寄り染 […]
第二百四十九夜   カツ カツ カツ 十数歩後ろを硬い足音が背後から付いてくる。最終電車から降り、駅前の小さな繁華街を抜け、公園の脇の道へ入り、辺りが静かになってからずっとだ。 強姦魔か強盗か、それとも単に家の […]
第二百四十六夜   怪奇モノのTV番組を見え終えた娘達に風呂を促そうとしたときだった。 「じいちゃんも、死神を見たことがあるぞ」 と、ビールで酔った父が上機嫌に笑う。 私が子供の時分には、こんな風に子供と会話を […]
第二百四十五夜   薬品の臭いのする廊下を、足音を忍ばせながら部屋番号を確かめつつ歩く。特に病院が嫌いというわけではないが、非日常的な清潔さ、静かさ、臭いには、どうしても胸がざわつく。 ――あった。 目的の大部 […]
第二百四十三夜   突然、ブツリと電話が切れた。 大型連休を目前に控えた夜、大学の友人の一人から数年ぶりに掛かってきた電話だった。連休中に暇ならば久しぶりに会って酒でも飲もうと、スマート・フォンを肩と耳とで挟み […]
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