第二百五十六夜

 

地元だからと案内を頼まれ、ゼミの友人と二人して、最寄り駅から近所の神社へ並んで歩く。

古くから門前町として栄えた地域だが、ここ数年は外国人観光客が急増した。季節によっては、昼のあいだ平日と言わず休日と言わず、細い歩道に人が溢れる有様だ。

大通りを一本奥へ入ると、表の喧騒が嘘のように人気がないのは、どこの観光地も同じだろうか。ようやく落ち着いて事情を聞くと、彼女の弟が受験学年で、大型連休に里帰りした際、学業成就の御守を頼まれたのだという。

暫く歩くと正面に石の鳥居が見え、友人が、
「あそこが?」
と首を傾げる。雨粒こそ落ちていないが、梅雨の暗い雲の下で紫陽花の花一つ無い茂みに囲まれたそこは、しかし今回の目的の神社ではない。

もう少し歩くよと言いながらその鳥居の前を通り過ぎようとしたとき、カッと何か硬い音がして背後の足元を振り返る。

友人も同じように振り向いて、小さく驚きの声を上げてから、汚れた雑巾でも触るように、何かを地面から摘み上げ、私の目線の高さまで持ち上げて見せる。

それは透明な丸い玉で、中心を通るように円柱状の孔が貫通しているようで、その部分だけが白く見える。アクセサリか何かの飾りだろうかと言うと、友人が今度は左腕に付けた、透明な玉に糸を通して作った腕輪を私に見せ、
「多分、これ」
と声を震わせる。
「うん?糸か何かが切れちゃったの?」
と問うと、彼女は腕輪を外して見せ、
「ううん、切れてない。でも……」
と、円く一続きのままの腕輪の玉を左右の手で一つずつ摘み、左右に軽く引く。すると紐に隙間が空く。その隙間は、ちょうど先程拾った玉一つ分だった。

そんな夢を見た。

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