第二百五十九夜
目を覚ますと下腹に、痛みに近い尿意を覚えた。
寝る前に用は済ませたのだが、こればかりは仕方がない。小学生の中学年頃から数日に一度はこうして尿意で目を覚ますようになってもう数年経つ。
睡魔の押し下げる瞼をどうにか開けると、月明かりが薄く照らす子供部屋に、青白い脚が浮いている。二段ベッドの上の段に寝ている、寝相の悪い姉の脚だ。実際に落ちたことは無いが、落ちそうになって、或いは落ちそうなところを私に発見されて夜中に目を覚ますことが度々あった。私ももう中学生だし、姉ほど寝相は悪くないから交代しようと言っても、姉には姉なりのプライドがあるらしく、上の段を譲ろうとしない。
体を起こしてベッドを降り、トイレへ向かうついでに脚を掴んでベッドの柵の内側へ雑に押し上げる。背が低いので上の段の様子は見えないが、寒い季節でもないので放っておいて、徐々に痛みの増す尿意の処置をしようと部屋の扉を開けると、丁度反対からノブを引こうとしていた姉が驚いて小さく悲鳴を上げる。
「あんたもトイレ?先に寝るよ。お休み」
と言って入れ違いに部屋に戻る姉は、そのまま梯子を上り、何事もなく布団を被って横になった。
そんな夢を見た。
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