第二百三十三夜

 

耳慣れない音に目を覚ますと、常夜灯の橙色の灯りに、いつもよりずっと高く広い天井が視界を覆っている。枕や布団も普段よりずっとふかふかで、自分が寺生まれの友人宅に泊まりに来ているのだと思い出される。小学校の卒業記念に、仲の良いもの同士五人で思い出作りにと話し合った結果、
「うちのお堂でよかったら」
と、二度目の修学旅行のような気分で枕を並べて寝ていたのを、寝ぼけた頭で思い出す。

耳慣れぬ硬くくぐもった音が、断続的に聞こえる。どうやら堂の外のどこかから聞こえてくるらしい。

何となく寝返りを打つと、隣の布団の友人が掠れた声で私を呼び、
「何か聞こえない?」
と言うと、あちこちからヒソヒソ声が飛び交って、その正体の議論が始まる。

そのうちついつい声が大きくなって、最後まで寝ていたこの寺の娘が目を覚まし、
「どうかしたの?」
とあくび混じりに言う。皆で不気味な音がと訴えると、
「ああ、丑の刻参りよ。毎年春には多いの」
と平然と答える。大袈裟にきゃあきゃあと怖がる私達に、しかし彼女は眠たげに、
「私達が呪われてるわけでもないし、大丈夫。そもそもうちは神社でもないのにね」。
最後に、
「丑の刻参りなんて、現実で問題を解決できない根性無しのやることだから、怖がらなくても良いって、お父さんも言ってたから、気にしないで」
と言うと、彼女は直ぐにすやすやと寝息を立て始めた。

そんな夢を見た。