第二百四十三夜

 

突然、ブツリと電話が切れた。

大型連休を目前に控えた夜、大学の友人の一人から数年ぶりに掛かってきた電話だった。連休中に暇ならば久しぶりに会って酒でも飲もうと、スマート・フォンを肩と耳とで挟みながらスケジュールを確認しに手帳を探していたのだが、何も言わずに通話が切れたのだった。

画面を見れば、電話帳登録された友人の名前とスマート・フォンの電話番号、五分ほどの通話時間、そして既に通話の切れていることが示されている。

余りに唐突な切れ方で、直ぐに掛け直そうとして、思い留まる。唐突に通話が切れたのが電池切れなら、直ぐに折り返しても無駄だろうと思い至ったからだ。それ以外にも、何か急な用事が出来たような場合でも、直ぐには受けられないだろう。

暫く間を置けばあちらから掛け直してくるだろうと、そのまま手帳で予定を確認する。

スマート・フォンを見ると、まだ一分も経っていない。

本棚に積んだ中から適当な新書を取り出してテーブルに持って行き、薬缶を火に掛け、前書きに目を通し、インスタントの珈琲を淹れる。

珈琲を一口啜って時刻を確認すると、五分ほど経っていた。ぼちぼち頃合いだろうかとスマート・フォンを取り出してテーブルに置き、ページを捲る。

十分経った。何か厄介な用事でも出来たのだろうか。電源が落ちたというだけなら、もう折返しが来ても良さそうなものだ。

しびれを切らし、直前の通話履歴を選択して電話を掛けると、呼び出し音は直ぐに終わり、
「おい、どうした」
と言いかけた私の耳に、
「この電話番号は、現在、使われておりません」
と、淡々とした女性の案内音声が届く。

そんなはずは無い。電話を切って履歴を見る。確かに、彼と十分前に会話をしたのと同じ番号へ掛けている。

スマート・フォンを水に落とすなりの故障だろうか。いや、それならば案内音声は「電源が入っていないか、電波の届かないところ……」だろう。料金の不払いだろうか。それでも、「お客様の御都合で、お繋ぎできません」だった筈だ。

検索をしてみると、「使われておりません」は電話を解約した状態でしか使われないとある。だがまさか、彼が解約手続きをしながら私と通話をしていたなんて、そんな馬鹿なことはあるまい。

首を捻りながらスマート・フォンをテーブルに戻し、新書を再び開くが、どうにも集中できなかった。

そんな夢を見た。