第百七十四夜   夏の終わりにシーズンをやや外れて安くなった学生向けのプランを利用した旅行を友人から提案され、なんとか金と時間の都合を付けて参加することになった。 しかし、ターミナル駅の高速バス乗り場へ早朝に付 […]
第百七十二夜   「この後、幽霊を見に行かないか」と誘われて、思わず、 「は?」 と間抜けな声を上げてしまった。 頭から外した手拭いで顎の下の汗を拭いながら誘ってきたのはこの剣道クラブで知り合った中年男だ。クラ […]
第百六十夜   朝食の片付けをしていると電話が鳴った。急ぎ手を拭いて番号表示を見れば娘の緊急連絡網の上流で、受話器を取る。朝の挨拶を交わした後に相手の告げた用件は、 「数日前の不審者情報で流れた犯人が逮捕された […]
第百五十九夜   客が出ていったのを見計らって押し入れから出、分厚い樫の一枚板の卓の前の座布団の下を探って、平べったい板を取り出す。 昨日から宿泊している夫婦の、旦那のものを忘れて行かせたのである。何やら写真を […]
第百五十七夜   友人に誘われて、人里離れた山奥へ早朝から同僚が合計四人、一台の車に乗り合わせてドライブをしていた。高速道路を下りて一時間ほど走ると、辺りは一面田畑の緑が広がり、その中に点在する一軒の家でセダン […]
第百四十八夜   公園の水飲み場に溜まった水で行水をしていると、フィヨフィヨフィヨと聞き慣れぬ声がする。 嘴で翼の羽根を梳かしながらチラと見ると、ここらではあまり見ない、茶色い斑の鳥が降りてきた。冠のような飾り […]
第百四十一夜   始めたばかりの写真の練習台に野鳥でもと思い立ち、近所の水場へ出掛けた。池に着いて双眼鏡を手にあちらこちらを見回していると、カラスほどの大きさの見慣れぬ鳥が岸辺を歩いているのに出会った。 頭から […]
第百四十四夜   一ヶ月ぶりに取引先を訪ね、担当者に応接室へ招かれて中に入ると違和感を覚えた。 入口の扉の正面は大きな窓、部屋の中央に硝子の天板の卓、手前と奥とに革張りのソファ、部屋の四隅には観葉植物が置かれて […]
第百四十一夜   健康だけが取り柄の私が突然の腹痛に襲われて病院に担ぎ込まれ、痛みに悶ているうちにあれよあれよと事が進んで、いつの間にやら手術が終わって入院という運びとなった日のことである。その晩、これまで入院 […]
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