第二百二十五夜

 

暇に任せてカウンタの裏に出した椅子に座って雑誌を読んでいると、店の外からLEDの強い光が目を刺した。駐車場に目を遣ると、見慣れぬ銀色の乗用車が入ってくるのが見える。

椅子と雑誌を事務所へ片付けて客を待つ。山の麓のコンビニエンス・ストアだから、こんな深夜にやって来るのは地元の客かトラックの運転手が殆どだ。車からしてどちらでもないとなれば、深夜のドライブで遠出をしてきた物好きだろう。

頭から駐めた車のヘッドライトが消えると、運転席から若い男が降りてきて店の自動ドアを潜る。

男は店の中を見渡すと、カップ麺とサンドウィッチ、トマト・ジュースの缶を手にレジスタの前にやって来る。ホット・コーヒーの追加注文を聞きながらレジ袋を取り出すと、彼は胸の前に手を上げて、どれもイート・インで食べるから袋は要らないという。
「あれ?」
と思わず口をついて出て、慌てて失礼しましたと頭を下げ、商品を手に取ってバーコードを読み込む私に、彼は特に気分を害したような様子でもなく、単純な好奇心といった口調で、
「どうかしましたか?」
と首を傾げる。

問い質されてしまっては仕方がない、というのは言い訳だろうか。何でも無いと誤魔化して済ますのを、客の来ない退屈な店番が育てた人恋しさと好奇心が邪魔した。
「助手席に彼女さんが居るのに降りていらっしゃらないんで、勝手に車の中で召し上がるのかなと思いまして」
と言うと、彼は慌てた様子で、車には誰も載せていない、一人できたと駐車場を振り返る。私も釣られてそちらを見、
「あれ、気の所為でした」
と頭を下げる。

会計を済ませてカップ麺に湯を注ぐ音を聞きながら、駐車場の車内の助手席に確かに見た、店内から漏れる明かりで青白く浮かび上がった姿は一体何なのかと思うと、暖房の効いているはずの店内が薄ら寒く感じた。

そんな夢を見た。