第四百十七夜   クリスマスの早朝、白い息を吐きながら荷台に酒を積み終えると、いつものルートでいつもの配達に出掛ける。 凛と冷えて静かな街にトラックを走らせ、お客から預かった鍵で無人の店舗へ荷物を搬入し、回収す […]
第四百十六夜   ここ三ヶ月の間に、気付けば七キロ程も体重が増えていた。自分の体重に対して十パーセント、太り気味の飼い猫丸一匹よりも大きな質量が、腹やら尻やらに蓄えられたことになる。 仕事を終えての帰り道、途中 […]
第四百十四夜   不意のトラブルに対処するために帰宅が遅れ、久し振りに最終間近の電車で最寄り駅へ到着した。 軽食を摂る暇もなく、クリームと砂糖を入れた珈琲で誤魔化していた腹に何を入れるか考えながら、すっかり人出 […]
第四百十三夜   遅く起きた朝とも昼とも付かぬ時刻、ブランチの用意を終えて食卓に就くと、夫の携帯電話が着信を知らせる呼び出し音を鳴らす。彼は 「妹からだ」 と呟くと、行儀が悪いからと席を外し、先に食べていてくれ […]
第四百十二夜   給食の時間が終わって昼休みになると、クラスの中でいちばん脚の速い男子が弾けるように廊下へ飛び出して行く。 私もそれに続き、一応は駆け足禁止となっている廊下を駆け抜けて一階の渡り廊下へ出る。 雨 […]
第四百十一夜   この半年で、放課後は母の勤め先の工場へ向かうのがすっかり習慣になっていた。学校に併設された預かり施設が一時停止していた期間中に、工場が簡単な施設を整えてくれたと言って、母が嬉しそうにしていたの […]
第四百十夜   トレイに載せたグラス二つを窓際の少女達へ運ぶと、 「ね、大手町の首塚が壊されて、早速、祟り?かなんかの地震が起きたんだって?」 と聞こえてきた。 私のバイト先であるこの店は大手チェーンに比べて値 […]
第四百九夜   始業前、コートを脱ぎ給湯室へ行こうとすると、既に席についていた上司が、 「申し訳ないけれど、私の分もお願いしていい?」 と、こちらにひらひらと右手を振りながら声を掛けてきた。 珍しいこともあるも […]
第四百八夜   仕事帰り、野球シーズン最後の試合が気になって、久し振りに外で酒でも飲んで夕食代わりにしようかと思い立った。 駅前に、店の前面が一面硝子張りで中に大きなTV画面が見え、いつも野球中継を流しているの […]
最近の投稿
アーカイブ