第三百九十夜   運動不足の解消にとジョギングを始めて早三ヶ月が経ち、そろそろ風景にも飽き、涼風も立ち始めたので、少しばかり距離を伸ばそうかと思い立った。 夕飯の片付けを終えて着替えると、スポーツ飲料を水筒に入 […]
第三百八十九夜   始業のチャイムを待つ教室は、毎朝の例に漏れずお喋り好きの連中の声でざわめいていた。 ただ、賑やかかといえばそうではない。皆、周りの耳を憚るように声を潜め、それでも話さずにはいられないひそひそ […]
第三百八十八夜   実家の父からちょっとした用事の電話があって、それが済むと何となくどちらからともなく、世間話が始まった。 今年は盆に帰省が出来なかったから、墓のことやら何やらと話して、そろそろ話の種も尽きる頃 […]
第三百八十七夜   通り雨が止んだのを見計らって、具合が悪いと寝込んだ妻のメモを頼りに買い物に出掛けた。 入念にメモを確認して買い忘れの無いことを確認して店を出ると、夕陽が雨を蒸発させて風が粘つく。先程まで生鮮 […]
第三百八十六夜   深夜、僅かなタクシィとトラックの他には通るもののほとんど無い幹線道路に自転車を走らせて日暮里駅の東側に着くと、シャツもズボンもすっかり汗で湿っていた。 九月のこの時間でもまだ湿った熱気が澱の […]
第三百八十三夜   このご時世で勤め先が無くなって、それでも伝を辿ってどうにか不動産屋に拾ってもらい、二週間ほど仕事を教えてもらった後、盆は「休み中に覚えておけ」と出された宿題を慣れないながらどうにかこなすのに […]
第三百八十二夜   秋の夜長と言うほどではないが秋分も近付いて幾らか日暮れも早くなり、夕食後の腹がこなれてジョギングに出掛ける頃にはもうすっかり夜になっていた。 ジョギング用のジャージとTシャツに着替え、軽くス […]
第三百八十一夜   一人暮らしの一週間分の食料の買い出しに街へ行った帰り、もう陽も沈みかけて薄暗い谷沿いの道を車で走っていると、道の真ん中にうずくまる白い人影が見えた。 速度を落としながら近付くと、ライトの中に […]
第三百八十夜   定時の巡回から帰るなり、 「いや、参った。汗だくだから、ちょっと着替えるわ」 と、先輩は毛むくじゃらの手に持ったタオルで顔の汗を拭った。どうぞと答える暇もなく彼はロッカを開けると上着を脱ぎ始め […]
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