第四百四夜   勤め先から車に乗って三十分、最寄り駅の近所まで来て、最近珍しいくらいの渋滞にぶつかった。 前方が動かぬのを見てハンズ・フリーのまま妻に状況を報告し、ついでに量販店での買い物でも無いかと打診する。 […]
第四百三夜   後輩の女子社員に頼まれて休日の買い物に付き合った帰り、特に用事もないので一緒に下りの列車に乗った。ちなみにこれはデートなどでは決してない。彼女に初めてできたボーイフレンドへの誕生日プレゼントを決 […]
第四百二夜   東海道を箱根に向かって下り始めて小一時間、そろそろ上り坂になってきた。辺りの景色も、何が面白いのか子供の頃に親がテレビで付けていた駅伝で見たのか、どことなく懐かしい。 予約した宿の看板を見付けて […]
第三百九十八夜   居心地が悪いのと申し訳ないのとで、断られつつも母の洗い物を手伝い、居間へ戻ると、何やら楽しそうに父と夫が食後のお茶を飲んでいた。 お腹がいよいよ大きくなって休職し里帰りをしているところへ、来 […]
第三百九十六夜   週の殆どを在宅勤務で過ごしていて、隣家、といってもアパートの隣室なのだが、最近少々気になることがある。 平日の四時半頃になると、小学校高学年の姉が、弟を連れて帰ってくる。数日前に隣室の父親と […]
第三百九十五夜   政府が旅行業者への支援策を打ち出したことから、例年なら貧乏学生のサークル合宿でなどとても手の出ないような宿を格安で借りられるとの情報が周ってきて、有志というか、遊びに回せるお金に余裕のある者 […]
第三百九十四夜   「いないわよ、そんなもの」 と、スピーカから聞こえる母の声には、ただ藪から棒に訳の分からぬことを訪ねてきた娘の真意を測りかねるという戸惑いの色だけが浮かんでおり、隠し事をしていた後ろめたさだ […]
第三百九十三夜   「おい、兄ちゃん」 と肩を揺さぶられて目が覚めた。寝袋の中は軽く寝汗をかく程度に暖かだが、外に出ている顔に当たる風は随分冷たい。その冷たい顔を、よく陽に焼けた人の好さそうな老爺と黒い柴犬が覗 […]
第三百九十二夜   冷たい風の吹くようになった帰宅途中、住宅街にあるコンビニエンス・ストアへ立ち寄って週刊誌と晩酌のツマミを籠に入れてレジスタへ向かうと、中学の同級生が立っていた。 ここは元々酒屋の持ちビルで、 […]
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