第四百四十九夜

 

借りてきた本の頁を夢中になって捲っているうち、いつの間にか雨はすっかり止んでいた。

本に栞を挟んで手提げに仕舞って自転車の前籠に入れ、サドルの下に挟みっぱなしのタオルで濡れたサドルとハンドルを拭いて自転車に跨り、庇を借りたお社に一礼して境内を出て、家に向かって自転車を漕ぐ。

学校の図書室で借りたい本を検索したところ残念ながら既に借りられており、市の図書館になら借りられていない蔵書があると司書の方に教えて貰い、急いで帰宅したのが一時間ほど前だろうか。オンラインで管理しているから予約して数日待てば学校で借りられると言われたけれど、自転車で十分ほどの距離だからと断って、急いで図書館に向かったのだ。

無事に本を借りた帰宅途中、雲もないのに急に雨が降ってきた。狐の嫁入りというやつである。ちょうど神社の前だったので雨宿りをさせてもらい、お賽銭箱の横に背を預けて座り込み本を読んだのは三十分程だったろうか、雨のせいでもあるから予告より帰宅が遅れたといって怒られたりはしないだろう。

そんなことを考えながら帰宅するとガレージから、
「おう、忘れ物でもしたか?」
と祖父の声が飛んで来る。家を出るときに裏山の片付けに出るといって軽トラックに荷物を積み込んでいたけれど、雨のせいでもう戻ってきたのだろうか。
「ううん、ちゃんと図書館に行ってきたよ」
と手提げを揺らして中身が入っていることを示すと、祖父は文字通り目を丸くして驚き、まだ出ていってから二、三分しか経っていない、だから忘れ物でもしてすぐ戻ってきたのかと思ったのだと言う。

そんな馬鹿なと反論するが、雨だって降っていないし、そこらを見ても少しも濡れていないだろうと指差されたガレージの外を見れば、確かに土も生け垣の木も少しも雨に降られた様子がない。それで思い出して、
「でも、ほら」
と、サドルの下のタオルを取って絞ってみせると僅かに水が滴る。それを見た祖父は、ほんの数分で本と濡れたタオルを仕込んでまでこんな意味のない悪戯をするとは思えない、
「不思議なこともあるもんだ」
と、それでも納得が行かないといった風に眉を歪めながら嘆息するのだった。

そんな夢を見た。