第四百四十八夜

 

緊急事態宣言が解け、久し振りに社会人サークルの仲間でキャンプ場に集まった。陽の落ちる前に作った夕食を平らげ、持参したアルコールを飲みながら洗い物を済ませると火を囲みながら談笑をして過ごし、さあ随分疲れたと解散して、密を避けるために各自で張ったテントに戻る。

しかし、辺りがすっかり暗くなり疲れるほど会話をしたにもかかわらず、時刻はまだ午後九時を回ったところである。いざ眠ろうといってすんなり眠れる者は少ない。

解散といってもメンバーのテント同士の間隔はせいぜい数十センチメートルしか離れていない。公に出来る内容であればテント越しに会話も可能だから、少し離れた他のグループに迷惑にならない小声ではあるが、結局だらだらと会話が続く。
そのうちに幾つかのテントからゴソゴソと荷物を漁り酒盛りの続きを始める気配がしてこちらもそれに倣う。暫く遠慮勝ちな小声で談笑していると、隣のテントから飲み物が切れたと声が上がる。

彼がキャンプ場の入り口の小屋の前に自動販売機があったと言うので、小屋の近くに設置されている便所へ行きたいから同行しようとテントを出、二人並んで懐中電灯で足元を照らしながら砂利道を歩く。

道が沢へ行き当たると下への視界が開け、昼ならば見晴らしが良いのだが、今はただずっと闇が続くばかりで、盆地の集落にぽつぽつと人家の灯りが見えるばかりだ。程なく小屋に到着して並んで用を足した後、彼が自販機の前で商品を選んでいる間に斜面を見下ろしていると、複数のバイクの排気音が聞こえ、木々の隙間に灯りがちらつく。

ツーリングの集団だろうかと思っていると光と音とがどんどんこちらへ近付いてきて、キャンプ場の入り口の前の舗装路を次々に横切って行く。余りに意外なその正体に呆けていると、飲み物を抱えた友人にどうかしたのかと声を掛けられて漸く正気に戻り、
「尻尾の先に火の点いた狐が、凄い速さで通り過ぎていった」
と、見たままの事実を報告すると、随分酔っているんだなと笑われた。

そんな夢を見た。