第六百二十一夜   「前任の方、亡くなったんですって?」。 今日初めて派遣された清掃先で、先方の警備責任者という人間が、建物の見取り図と注意事項を書いた書類、入構証と鍵束を手渡しながらそう言った。 「はあ、そう […]
第六百二十夜   何やら冷たいものが頬を撫でる感触で目が覚めた。猫が朝飯をねだりにでも来たろうかと思うが、それにしては感触が冷たい。ならばカーテンが風に吹かれ頬を掠めて揺れているのだろうか。いや、師走も半ばにな […]
第六百十八夜   定期試験の最終日、試験後のホームルームで担任が、五名ほどアルバイトを雇いたいというので立候補した。在校生の定期試験の終わった明日からは中等部の推薦入試が始まるそうで、そのために各教室の机を運び […]
第六百十七夜   夕飯の後の洗い物を終えて風呂を洗っていると、母が犬の散歩から帰ってきた。我が家では犬の散歩は交代制で、夕食後に散歩へ連れて行った者が一番風呂に入る決まりになっている。普段なら帰宅に間に合うつも […]
第六百十六夜   友人と二人連れで映画を見た帰り、夕食を摂るにはまだ早く解散するにはまだ早い。何か甘いものでも食べるのに良い店はないかと繁華街を並んで歩いていた。 暫く歩くと、髭を生やしナイト・キャップを被った […]
第六百十四夜   友人がメッセージ・アプリで、 ――ちょっとこれを見て という言葉とともに猫の画像を送ってきた。長毛種の猫が撫でろとでも言うように仰向けになって腹を見せている。 提出課題をやっつけている最中だっ […]
第六百十三夜   郊外の大型量販店へ買い出しに出掛けた帰りの夕刻、事故でもあったか五十日にでも当たったか知らないが幹線道路で渋滞に巻き込まれた。 幹線道路といってもこの辺りは住宅街にほど近く、また片側が三車線も […]
第六百十二夜   仕事から帰宅して夕食を撮ると直ぐ、前日から準備していた荷物を車へ積み込んで友人宅へ出発した。彼のキャンプ趣味に興味を持った私が何処かへ連れて行ってくれと頼むと、二人分の用具は十分にあるのだが彼 […]
第六百十夜   マグカップに手を伸ばしながらモニタの時計に目をやるともうそろそろ昼休みという頃合いに、半休の連絡があったという上司が出勤してきた。振り向いて朝の挨拶を疑問形で投げかけると、しかし彼は土色の顔で生 […]
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