第六百八十三夜   期末試験が終わって夏休みまでの準備期間のような朝、高校の最寄り駅からの通学路を歩いていると後ろから自転車でやってきた級友に声を掛けられた。 振り向いて挨拶を返すと彼は汗だくの顔に妙に清々しい […]
第六百八十一夜   夕立の気配のしてきた空を眺めながら家の中へ早く支度をして出てくるように声を掛けると、両手に荷物を持った娘がバタバタとやってきて助手席に乗り込んだ。 後に続いて運転席に座ると、彼女は膝に乗せた […]
第六百八十夜   うだるような夏の午後、いつも通り閑古鳥の鳴く店内でお手製のかき氷をスプーンで突付いていると、硝子の棒の触れ合う涼やかな音が店内に響いた。戸外の熱気と共に店へ入ってきたのは体格の良い短髪の男性で […]
第六百七十九夜   陽が暮れてなお蒸し暑い中を帰宅し、郵便受けの中身を確認してゾッとした。チラシの類に紛れて一枚、見覚えのある葉書が見えたのだ。 昼の熱気を蓄えて蒸し暑い部屋に入り、荷物を置いて冷房を掛けてから […]
第六百七十八夜   久しぶりによく晴れた休日の午後、早々に乾いた洗濯物を取り込んでいると、ポケットの中でスマート・フォンが振動した。そそくさとベランダへの掃き出し窓を閉めて冷気の流出を止めてから確認すると、大学 […]
第六百七十七夜   トレイに載せたカップ二つを窓際の少女達へ運ぶと、 「ね、後輩から凄いのが送られてきたんだけど!」 と聞こえてきた。 私のバイト先であるこの店は大手チェーンに比べて値段が安く、彼女達のような学 […]
第六百七十六夜   始業時間前に淹れたコーヒーを飲みながらデスクでニュース記事を眺めていると、珍しく遅めにやって来た部下の一人が慌て気味にデスクに着くのが目に入った。 ここのところ顔色が優れなかったこともあり、 […]
第六百七十五夜   夏至が近付いて随分陽が長くなった。七時を回って尚薄明るい中を最寄り駅から自転車に乗って帰宅すると、先に帰宅して、犬とともに出迎えてくれた妻に元気がない。どうかしたのかと尋ねる私に、彼女は右手 […]
第六百七十四夜   仕事の話を終えて荷物を片付けながら、間を埋める世間話に、 「あの、先程はご都合を考えずにお電話差し上げてしまって失礼致しました」 と今更ながら謝罪をした。遡ること三時間ほど、打ち合わせに先立 […]
最近の投稿
アーカイブ