第七百四夜

 
仲の良い友人三人と連れ立って、学校見学を兼ねて某理系大学の学園祭にやってきた。案内のパンフレットを手に色々の勧誘を受けながら校舎を歩いていると、お化け屋敷の看板が目に入る。

最先端の科学を学問する大学で幽霊や妖怪も無かろうと笑っていると、呼び込み係とおぼしき白装束に白い頭巾、片目を特殊メイクで腫れさせたお兄さんが、「最新の映像や音響、センサや素材を体感してもらうための出し物だ」と説明をしてくれる。
面白そうだと列に並び、入り口の机に載せられた生首のお兄さんの案内に従って二人一組で中に入る。
中に入ると自律飛行する超小型ドローンを用いた青白い人魂がふらふらと飛んでいるのが目に入る。歩けばリノリウム張りの床から、まるで河原を歩くかのように砂利を踏む音が鳴る。なるほどこういうことなら面白い。

あれはどういう仕組だろう、どこにセンサがあるのだろうと隣の友人と小声で感想をやり取りしながら歩くと、小さな教室を出るのにたっぷり五分は掛かったろうか。

後から教室に入った二人を待つ間にパンフレットを眺め、近くの学生食堂で一息入れることにする。興奮気味に出てきた二人の賛同も得られ、賑わう廊下の人混みに揉まれながら食堂へ移った。

飲み物やドーナッツを手に席に付くと、やはりお化け屋敷の話題が始まる。あの技術が凄い、あれはどういう仕組だったのだろう、多分こうだ、いやそれでは無理だと話しているうち、友人の一人が、
「そうそう、アレは怖いっていうか、ちょっと趣味が悪かったよな。最後の方の棺桶に小窓が付いてて、覗くと自分の顔が白い三角の布を付けてるの」
と唇を尖らせる。
「多分、初めの方で撮影した顔を加工して、見えにくいように嵌め込んだディスプレイに映しているんだろうけど……」
と話す彼は、残る三人が視線を遣り取りするのを見て、
「ん?どうかした?」
と言葉を切る。どう答えてよいものかと悩んでいると友人の一人が端的に、
「棺桶なんて無かったぞ」
と断言する。
「またそうやって俺を担ごうとして……」
と苦笑いする彼に、残る我々二人も静かに首を振った。

そんな夢を見た。

No responses yet

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

最近の投稿
アーカイブ