第三百夜   金曜の夜に夜行バスで東京へ来て、一日あちらこちらの庭園の写真を撮って回ると、冬至も近付いて黒々と澄んだ晩秋の空は月の見事な夜になっていた。 明日の夕方には再び高速バスに乗る予定だが、それまでの時間 […]
第二百九十六夜   空きっ腹と夕食の材料を抱えて帰宅し、ワンルームの狭い台所に立って驚いた。つい昨日まで何の問題もなく動いていた電気炊飯器の動作を示すランプが消えている。 恐る恐る蓋を開けてみれば、残業を見越し […]
第二百九十五夜   娘の出し物が終わると、次の種目まですっかり暇になってしまった。妻は一度自宅に戻って昼食の弁当の準備をするからと言って帰宅し、手伝おうかと提案したものの、普段から碌に料理をしてこなかった実績に […]
第二百九十四夜   バイトを終え、バックヤードで着替えていると携帯電話が鳴った。大学の友人の名前を確認し、イヤホンを耳へ刺して通話開始のボタンを押すと、何度も電話をしたのに何故出なかったと苦情が耳に飛び込んでく […]
第二百八十七夜   友人の声に顔を上げ、本を閉じてベンチを立つ。雑貨屋や服屋を見て回るつもりで待ち合わせをしていたのだが、予定より十分早く着いてから三十分も待たされた。 寝坊でもしたかと尋ねると、彼女は私の横を […]
第二百八十五夜   ソファ・ベッドの前に置いた低いテーブルに酒とツマミ、大型モニタにネット配信の映画を流す用意をして部屋の電灯を消してから、このささやかな宴の前に用を足しておこうとワンルームの戸を開けて便所に入 […]
第二百七十九夜   せめて気温の上がり切る前にと、開店直後の量販店で食料を買い込んだ。一週間分の食料のずっしりと重い買い物袋を両手に提げて、額を垂れる汗を拭うこともままならないまま住宅街の細い路地へ入る。 大通 […]
第二百七十八夜/h3>   日が暮れてなお蒸し暑いホームから車両へ入ると、よく冷えて乾いた空気がシャツの汗と体温を急激に奪っていった。それだけで、一日の仕事を終えそれなりの達成感と大きな疲労感を抱えた身体 […]
第二百七十七夜   夏休み最後の日曜というので、近所の仲の良い家族を誘って河原へバーベキュをしに行った。 幸い天候の不安もなく、家族連れ、職場の集まりと思しき集団、大学のサークルらしき若者達などでごった返す河原 […]
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