第三百二十一夜   仕事に一区切り付いた祝いに酒を飲み、二次会三次会へだらだらと付き合っているうちに、うっかり最終電車を逃した。 タクシィ代は財布に響くと嘆いていると、後輩の一人がJRの駅を指差しながら、 「う […]
第三百十七夜   正月二日の夜、大学のサークルで知り合った同性の友人から、 「突然で申し訳ないが、暫く家に泊めてくれないか」 と連絡が来た。 実家暮らしの彼女がわざわざ私の狭いアパートに泊まりたがるとは一体どう […]
第三百十六夜   「どうしたの」 と隣の机から同僚に声を掛けられて、口を突いて出た言葉は、 「いや、携帯電話がそこの充電スタンドにあったものだから、びっくりして」 というものだった。 全く要領を得ない私の返答を […]
第三百十五夜   餅を焼きながら簡単な味噌汁を用意していると、寝間着姿の娘が大欠伸をしながら起きてきた。 顔を洗って着替えてこいと伝えると、餅は雑煮に入れずにきな粉をまぶして出してくれとだけ言って洗面所へ姿を消 […]
第三百十四夜   大学のゼミ生が集まって二年参りが企画された。歳のいった教授曰く、彼自身は全く関与していないのだが、学生の側で勝手に始められた、昭和から続く伝統らしい。 カウント・ダウンの一時間前に駅前で集まっ […]
第三百十一夜   リビングのソファで上の娘が塾の宿題を解くのを後ろから眺めていると、廊下の戸が開いて柚子の香りが漂ってきた。 続いて寝間着姿の下の娘がロボットのように手脚をぴんと伸ばして登場し、妻がその髪をタオ […]
第三百十夜   トレイに載せたグラス二つを窓際の少女達へ運ぶと、 「ね、最近、生物室で授業あった?」 と聞こえてきた。 私のバイト先であるこの店は大手チェーンに比べて値段が安く、彼女達のような学生服姿の客も少な […]
第三百九夜   朝から電車に乗って適当な駅で降り、ぶらぶらと知らない街を歩いて写真を撮って回るのを趣味にしている。 今日も秋晴れの空の下、赤く実った万両の実やら、それをついばみに来る野鳥やらをフレームに収めなが […]
第三百三夜   疲れているのに目が冴えて眠れない。仕事の忙しい時期になると、時々そんな夜がある。 仕方がないので部屋のテレビを付け、音量を絞る。部屋の灯を点けてしまうと余計に目が冴えるというから、画面の光で常夜 […]
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