第三百十七夜

 

正月二日の夜、大学のサークルで知り合った同性の友人から、
「突然で申し訳ないが、暫く家に泊めてくれないか」
と連絡が来た。

実家暮らしの彼女がわざわざ私の狭いアパートに泊まりたがるとは一体どうしたことか。

それでも、年末に大掃除をしたばかりなので部屋はまだそれなりに綺麗だし、大学は入試シーズンでしばらく授業もない。

一日二日なら構わないと返すと三十分ほどで、毛糸の帽子、マフラ、分厚いコートを着込んで丸っこいシルエットになった彼女が、大型のキャリー・バッグを従えた姿がアパートのインター・フォンに映し出される。失礼ながら、まるで家出少女のようだ。

ロックを解くと直ぐに上がってきた彼女を迎え入れ、コート、毛糸の帽子、マフラと次々に防寒具を受け取ってはクローゼットに掛けながら、
「正月早々、親と喧嘩でもしたの?」
と尋ねると、
「いや、大当たりから避難してきたの」
と言う。思わず眉間に皺を寄せ、どういうことかと重ねて問うと、話すと長くなるという。

手を洗い紅茶を淹れる私を手伝いながら彼女の言うには、年が明けてから彼女はバカ憑きなのだそうだ。

元日には、サークル仲間と行った二年参りで引いたおみくじが大吉、朝帰りして家族と行った神社でも大吉。そのままデパートの初売りで買った福袋でも目玉商品が大当たり。

二日の今日も近所のスーパーへ食料の買い出しに行って、特賞が当たったという。
「そんなラッキー・ガールさんがどうして私に泊めて欲しいの?幸運のお裾分け?」
と、彼女の持ってきたクッキーを片手に尋ねると、
「この特賞が生牡蠣でね、嫌な予感がして私は食べなかったんだけど、両親と妹が見事にノロに中って……」。

ウィルスのばら撒かれたトイレを使うだけでも感染すると言うので、大慌てで荷物を纏めて家を出て、彼らの症状の治まるまでの宿を求めたのだという。
「ラッキーと言うよりは、大当たりの女ね」
と自嘲する彼女を見ながら、悪い方の「当たり」に巻き込まれはしまいかと背筋が寒くなった。

そんな夢を見た。