第三百五十八夜   就職先で非常事態宣言が終了し、友人宅へ集まって久し振りに酒盛りをすることになった。 交通の便の良いところが好ましいと誰かが言い出し、それならと名乗り出た者の最寄り駅に集まると、彼は駅前の広場 […]
第三百五十夜   バイト暮らしに便利だと選んだ繁華街の裏手の古いアパートの、猫の額ほどの小さな庭に、今更斧を振り回す隙間も倒れる場所も無いほど立派なクヌギが生えている。 その根の大きく盛り上がった下に、誰が掘っ […]
第三百四十九夜   日の高くなる前に庭の草を毟り、風呂でその汗を流し、さてそろそろ昼食の準備に取り掛かろうかと、蕎麦を茹でるべく鍋に水を張って火に掛けたときのことだ。 ワンワンと二度、犬の鳴くのが聞こえる。隣で […]
第三百四十五夜   母にメモと財布とを渡されて、家から徒歩十分ほどの距離にある駅前のスーパ・マーケットへ自転車で買い物に出掛けた。 マンションの駐車場で縄跳びやバドミントンを楽しむ小学生らを横目で見ながらペダル […]
第三百四十四夜   テレワークの拘束時間が終わったら買い物に行かねばと思いつつ、あれやこれやと資料を作っているうちに、夜も九時を回ってしまっていた。 近所に二十四時間営業のスーパ・マーケットがあるのだが、数日前 […]
第三百四十二夜   イベント自粛の影響ですっかり暇になってしまったある日、それでも店を開け、宣伝用のビラや企業ページの刷新作業をしていると、事務所の電話が鳴った。 机を離れて事務所へ急ぎ受話器を取ると、落ち着い […]
第三百四十一夜   短期の交換留学プログラムでホーム・ステイを受け入れてくれた家に初めて泊まった翌朝、緊張で眠りが浅かったからか、疲れの抜け切らない一方ですっきりと目が覚めた。 寝間着を着替え髪を梳かし、階下の […]
第三百三十九夜   コロナ・ウィルスの影響で、我がサークルでも会議が開かれた。といっても、メッセージ・アプリのグループ・チャット上での会議である。大学も施設の利用はほぼ停止して、入学式の日程すらも検討中だという […]
第三百三十七夜   山道の木々のトンネルを抜けると、昼下がりの空と海との青が目に刺さった。気温も二十二度は超えたろうか、丘を駆け下りながら風に体温を奪われるのが心地よい。 沖縄に転勤になって、もうじき一年が過ぎ […]
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