第三百二十七夜   マスタードの効いたソーセージを齧り、口の脂をライムの効いたカクテルで流す。週に一度、今週も折り返しまで頑張った自分への褒美として、仕事帰りに楽しむ「いつもの」メニュだ。 大きな繁華街の隅にあ […]
第三百二十六夜   小春日和の陽気から一転、日の暮れた街の冷たい風に肩を窄めながら、冷蔵庫の中身で何が作れるか思案しつつ帰途を歩く。 駅前と私の住むアパートのある住宅街とを区切るように流れる幹線道路の信号に引っ […]
第三百二十四夜   妻がインフルエンザで床に伏せたために、娘達の弁当など慣れない朝の支度に手間取って、家を出るのが普段より三十分ほど遅くなった。 最寄り駅までの道を人の流れに沿って歩きながら、今晩はどこかで妻の […]
第三百二十二夜   温かい布団の魔力からいつもより三十分も早く抜け出し、母に急かされながらどうにか支度をして家を出ると、冷たく湿度の高い空気が頬に絡みつき、吐く息が顔の前で白くなった。 ――暖冬暖冬といいながら […]
第三百二十一夜   仕事に一区切り付いた祝いに酒を飲み、二次会三次会へだらだらと付き合っているうちに、うっかり最終電車を逃した。 タクシィ代は財布に響くと嘆いていると、後輩の一人がJRの駅を指差しながら、 「う […]
第三百十七夜   正月二日の夜、大学のサークルで知り合った同性の友人から、 「突然で申し訳ないが、暫く家に泊めてくれないか」 と連絡が来た。 実家暮らしの彼女がわざわざ私の狭いアパートに泊まりたがるとは一体どう […]
第三百十六夜   「どうしたの」 と隣の机から同僚に声を掛けられて、口を突いて出た言葉は、 「いや、携帯電話がそこの充電スタンドにあったものだから、びっくりして」 というものだった。 全く要領を得ない私の返答を […]
第三百十五夜   餅を焼きながら簡単な味噌汁を用意していると、寝間着姿の娘が大欠伸をしながら起きてきた。 顔を洗って着替えてこいと伝えると、餅は雑煮に入れずにきな粉をまぶして出してくれとだけ言って洗面所へ姿を消 […]
第三百十四夜   大学のゼミ生が集まって二年参りが企画された。歳のいった教授曰く、彼自身は全く関与していないのだが、学生の側で勝手に始められた、昭和から続く伝統らしい。 カウント・ダウンの一時間前に駅前で集まっ […]
最近の投稿
アーカイブ