第三百九十七夜   早くも取り出した炬燵に脚を突っ込み、天板にの押せたノート・パソコンで仕事をしていると、両親の見ているテレビから、 「さぁさ飴は要らんかね、買えば楽しい紙芝居が見られるよ」 と、威勢のいい男性 […]
第三百九十六夜   週の殆どを在宅勤務で過ごしていて、隣家、といってもアパートの隣室なのだが、最近少々気になることがある。 平日の四時半頃になると、小学校高学年の姉が、弟を連れて帰ってくる。数日前に隣室の父親と […]
第三百九十四夜   「いないわよ、そんなもの」 と、スピーカから聞こえる母の声には、ただ藪から棒に訳の分からぬことを訪ねてきた娘の真意を測りかねるという戸惑いの色だけが浮かんでおり、隠し事をしていた後ろめたさだ […]
第三百九十三夜   「おい、兄ちゃん」 と肩を揺さぶられて目が覚めた。寝袋の中は軽く寝汗をかく程度に暖かだが、外に出ている顔に当たる風は随分冷たい。その冷たい顔を、よく陽に焼けた人の好さそうな老爺と黒い柴犬が覗 […]
第三百九十二夜   冷たい風の吹くようになった帰宅途中、住宅街にあるコンビニエンス・ストアへ立ち寄って週刊誌と晩酌のツマミを籠に入れてレジスタへ向かうと、中学の同級生が立っていた。 ここは元々酒屋の持ちビルで、 […]
第三百八十八夜   実家の父からちょっとした用事の電話があって、それが済むと何となくどちらからともなく、世間話が始まった。 今年は盆に帰省が出来なかったから、墓のことやら何やらと話して、そろそろ話の種も尽きる頃 […]
第三百八十五夜   終業時刻を迎えて多くの教員が帰宅する中、私を含む数人が職員室に居残った。 夏休み明けの試験の答案を採点しデータベースに入力する作業がまだ残っている。急ぎの仕事ではないのだが、個人情報云々がう […]
第三百七十七夜   蒸し暑さに目が覚めて、やや寝足りないものを感じつつ顔を洗って水を飲む。額や首に熱が籠もっているように感じるのは軽い熱中症だろうか。 汗で湿った寝間着をジョギング用の服に着替え、水筒とイヤホン […]
第三百七十六夜   八月に入って急に猛暑がやってきた。事務所内は冷房を効かせてそれなりに涼しいものの席により個人により体感温度が異なるし、節電という大義名分を味方につけた寒がり勢力に合わせた温度設定がなされてい […]
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