第三百九十七夜

 

早くも取り出した炬燵に脚を突っ込み、天板にの押せたノート・パソコンで仕事をしていると、両親の見ているテレビから、
「さぁさ飴は要らんかね、買えば楽しい紙芝居が見られるよ」
と、威勢のいい男性の声が響いてきた。

落ち着いたナレータの声が紙芝居屋は飴屋の行商だと説明すると、両親は揃って「初めて知った」と膝を打ち、続いて始まった画面の中の紙芝居を食い入るように見つめている。

男性の語りが終わったところでこちらの作業も丁度一区切り付いたので、
「懐かしいね。私も幼稚園の横手の公園でよく見てたなぁ」
と言うと、
「いやいや、平成生まれが何を言ってるの」
と二人で笑う。曰く、六十近い自分達でもほとんど見たことがないのに、三十にも成らない私が見たはずがないという。
そんなことはない、あの公園の噴水を背にいつも飴を舐めながら……と思うのだが、言われてみれば何の話を聞いたのか、周囲にどんな友人が居たのか、それともいつも一人ぼっちで眺めていたのか、さっぱり思い出せない。
「児童館の読み聞かせか何かの記憶と混同してしまってるんだろう」
と私を宥める母の向こうのテレビから、
「今六十年振りのブームにある紙芝居」
というフレーズが聞こえてきた。

そんな夢を見た。

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